建設業では、工事原価の管理や請負契約に基づく経理処理など、一般的な企業とは違った会計処理が必要なことがあり、専門的な知識が必要になります。建設業に必要な検定や試験について詳しく解説します。
建設業経理士とは
建設業経理士は、建設業経理検定試験(1級・2級)に合格した人のことで、建設業界の経理や会計業務に特化した知識などを証明する資格を持っている人のことです。
試験は、国土交通省の認定を受けており、特定建設業の許可要件にも関係する「経営事項審査(経審)」で評価されるので、建設業で有利な資格となっています。
主な特徴としては、建設業特有の原価計算、工事契約会計の理解が求められて、1級と2級があり、1級はさらに「財務分析」「原価計算」「財務諸表」の3科目に分かれています。
なお、経営事項審査(経審)とは建設業者の経営状況や経営規模、技術力などを審査する制度です。公共工事の入札に参加する建設業者が必ず受ける必要があり、建設業法に基づいて行われます。資格によっては、この経審で加点されることもあります。
建設業経理士と簿記検定の違い
「簿記検定」は、日商簿記(日本商工会議所主催)が代表的とされており、建設業だけでなく会計の基本を習得する資格ということに対して、「建設業経理士」は、建設業に特化した経理処理が中心になります。一般社団法人建設業経理検定機構が実施する建設業経理検定の合格者に与えられる資格となっています。
比較項目 | 建設業経理士 | 日商簿記 |
---|---|---|
主催団体 | 建設業振興基金 | 日本商工会議所 |
業界特化 | 建設業に特化 | 業界を問わず汎用性あり |
内容 | 工事原価・財務・分析など | 簿記の基礎~応用まで |
経審加点 | あり(国交省認定) | なし |
難易度 | 1級は高め | 1級は難関。2級は中程度 |
簿記検定は経理の基礎を学ぶのに向いていますが、建設業特有の会計を理解するには建設業経理士の方が実務に向いています。

その他、建設業におすすめの経理関係の資格4選
建設業で経理の人にとって、おすすめの資格をご紹介します。
会計ソフト実務能力認定試験
弥生・勘定奉行などがあります。実務で即戦力となるスキルを習得して証明できます。
会計ソフトの知識と実務能力を証明する民間資格ですが、簿記の知識と会計ソフトの運用に関する実務能力が評価されます。
試験は筆記試験と実技試験があり、実務で必要なスキルを習得できるため、経理業務を希望する人や、会計ソフトの導入・運用の能力を向上させたい人に役立ちます。
2級はパソコンの知識と企業実務の知識ですが、1級は簿記・経理、会計ソフトの知識、応用力などが問われることになっています。2級は誰でも受験可能となっていますが、1級は2級取得者または旧制度の第2種認定資格取得者となっています。
中小企業診断士
財務会計だけでなく、経営全体を見渡せるスキルが身につきます。経営管理やコンサルに携わりたい人にもおすすめの資格です。
中小企業の経営課題を解決するための診断や助言を行う国家資格です。経営コンサルタントの国家資格とも呼ばれおり、中小企業の経営に関する幅広い知識やスキルを証明することができます。
- 中小企業診断士の業務としては次の業務があります。
- 経営状態の分析
- 企業の課題の把握
- 売上アップにつながる解決策の提案
- 経営改善計画書・経営診断書の作成
- 経営に関するコンサルティング
- 経営の強化や問題点の洗い出し
ファイナンシャルプランナー(FP)
顧客のライフプランに基づいた資金計画を提案する資格ですが、企業の財務管理にも役立つ知識を習得できます。建設業では、資金調達や投資判断、リスク管理などの場面でFPの知識が活かせます。
試験は、金融、税制、保険、不動産、年金など、個人のお金の知識とスキルを測ることになっています。FP技能検定は1級、2級、3級があり、それぞれ学科試験と実技試験があります。
日商簿記
商簿記検定試験(日商簿記)は、日本商工会議所が実施する簿記の資格試験のことです。簿記の知識や技能を測る試験となっており、社会人や就職活動をする学生など、幅広い層に人気があります。簿記は、建設業を含めて、企業の経営活動を記録し、計算や整理をして、経営成績と財政状態を明らかにする技能のこととなっています。