特に建設業においては、夏場の厳しい暑さの中で作業を行う健康管理が重要な課題となっています。
６月より、労働者の安全と健康を確保するため、熱中症対策が法令により義務化されることになりました。
この義務化の概要、根拠となる労働安全衛生法、そして建設業における対策について詳しく解説いたします。
熱中症対策義務化について
2025年（令和7年）6月1日より、労働安全衛生規則の改正によって、職場における熱中症対策が義務化されます。
WBGT（湿球黒球温度）28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間以上作業を行う場合、事業者は適切な対策を講じる必要があります。
次の措置が義務付けられます。
熱中症の早期発見と報告体制の整備
作業者が熱中症の自覚症状を感じた場合、または他の作業者が熱中症の疑いがある場合に報告できる体制をつくる。
熱中症を生ずるおそれのある作業を行う場合に、「熱中症の自覚症状がある作業者」「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制（連絡先や担当者）を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することです。
熱中症の症状悪化を防ぐための対応
作業中止、身体冷却、医療機関への搬送などの対応手順を事前に定めて、関係者に周知します。
熱中症を生ずるおそれのある作業を行う場合に、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察、または処置を受けさせること、事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定めて、関係作業者に対して周知することです。
安全衛生法とは
労働安全衛生法（安衛法）は、労働者の安全と健康を確保するための法律であり、事業者に対して職場環境の改善を義務付けています。
今回の改正では、熱中症対策が強化されて、事業者は作業環境の管理、作業管理、健康管理の観点から適切な措置を講じなければなりません。
関連する法令は次のとおりです。
第一条（目的）
労働基準法第42条に定義されていた「安全および衛生」を独立させて、1972（昭和47）年の公布されました。
第一条では、この法律の目的、制度の趣旨が述べられています。
第一条
労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化および自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
労働基準法とセットになって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進の措置など、防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保して、快適な職場環境の形成と促進を目的とする法律となっています。
第三条（事業者の責務）
事業者は、労働者が安全で健康に働くことができるように必要な措置を講じなければならないと定めています。この義務が、熱中症対策の根拠となります。
第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
第二十二条（事業者の講ずべき措置等）
事業者は、高温、低温等による健康障害の対策をしなければなりません。
第二十二条 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
二 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
三 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
四 排気、排液又は残さい物による健康障害
建設業における熱中症対策
建設業では、屋外での作業が多くて、高温多湿、直射日光、照り返しなど、熱中症のリスクが高い環境で作業を行うことが多い業種です。ほかの業種以上に徹底した熱中症対策が求められます。
作業場所の対策
屋上、足場、トンネル内など、作業場所ごとに温度や湿度、風通しなどが大きく異なるため、それぞれの環境に応じた対策を講じる必要があります。
日陰のない場所では、休憩や緊急時のためにテントやパラソルを設置して、風通しの悪い場所では、扇風機や送風機を利用するのがよいでしょう。
冷房のある休憩場所や、日陰で風通しの良い休憩場所をつくって、いつでも休憩できる場所を提供します。
こまめな水分・塩分補給をしてもらった飲料水や塩分補給のタブレットなどを支給することもよいでしょう。
ヘルメットの通気性の確保、遮熱効果や冷房効果のある作業服などを支給することも対策になります。
仕事前の毎朝の体調チェックも重要になります。
