建設業を営む場合は、建設業許可は事業継続に不可欠なものです。この許可には有効期限があって期限が来る前に更新手続きを行う必要があります。もしも更新を怠ると、事業に大きな影響が出ることもありますので注意が必要です。
建設業許可の更新について、必要書類、手続き、注意点、そして万が一期限が切れてしまった場合の対応まで、詳しく解説します。
建設業許可の更新について
建設業許可には、一般建設業許可・特定建設業許可のいずれも5年間という有効期間が定められています。この期間が満了する前に更新の手続きを行わなければ、許可は失効してしまいます。
一般建設業許可とは、500万円以上の工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上)を請け負う場合に必要となる許可のことです。具体的には、請負金額が500万円以上の場合、建設業許可が必要となって、その中で元請けではなく、主に下請けとして工事を請け負う場合に取得するのが一般建設業許可です。
一方で特定建設業許可は、発注者から直接工事を請け負い、その工事を一部または全部を下請けに出す場合に、下請け代金が一定額以上(5,000万円以上、建築一式工事の場合は8,000万円以上)になる場合に取得が必要となる許可です。これは、元請け業者である建設業者が、下請け業者との関係を明確にして、工事の品質や安全性などを担保するために設けられています。
建設業許可の有効期間は5年間であり、許可を受けた日から5年ごとに「更新手続き」を行わなければ、その許可は失効してしまいます。
継続して建設業を営むためには、期限内に確実に更新申請を行うことが重要です。
なお、更新手続きは許可の満了日の30日前までに行う必要があります。更新は、新規で許可を取得するほど複雑ではありませんが、必要書類の準備や、行政庁への申請など、一定の手間と時間がかかります。余裕をもって準備をすすめたほうがよいでしょう。
許可の更新の申請をしていれば、有効期間満了後であっても、許可、または不許可となるまでは、従前の許可は有効です。
更新申請は、広島県の場合であれば、許可の有効期間の満了する3か月前から受付けしています。営業の意思があるにもかかわらず、有効期間の30日前(30日未満~有効期間)までに申請ができなかった場合は、広島県の件の申請窓口などに、ご相談ください。
建設業法の更新に関する条文です。
建設業法 第二章 建設業の許可
第一節 通則
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの
2 前項の許可は、別表第一の上欄に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる建設業に分けて与えるものとする。
3 第一項の許可は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
4 前項の更新の申請があつた場合において、同項の期間(以下「許可の有効期間」という。)の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の許可は、許可の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。
5 前項の場合において、許可の更新がされたときは、その許可の有効期間は、従前の許可の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする。
6 第一項第一号に掲げる者に係る同項の許可(第三項の許可の更新を含む。以下「一般建設業の許可」という。)を受けた者が、当該許可に係る建設業について、第一項第二号に掲げる者に係る同項の許可(第三項の許可の更新を含む。以下「特定建設業の許可」という。)を受けたときは、その者に対する当該建設業に係る一般建設業の許可は、その効力を失う。

更新の必要書類
更新の必要書類は、一般的な書類をご説明します。各都道府県によって、名称など異なる場合がありますので、実際の更新申請の場合には、各都道府県にご確認ください。
広島県の場合は、こちらをご参照ください。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/606782.pdf
建設業許可の更新に必要な書類は、新規申請時と重複する書類も多いですが、有効期間中の変更事項などを反映させる必要があります。主な必要書類は次のとおりです。
共通して必要な書類
・建設業許可申請書
所定の様式に必要事項を記載します。
・工事経歴書
直前1年間の完成工事を記載します。継続して事業を行っていることを示す重要な書類です。
・直前1年間の決算報告書
会社の財務状況を示す書類です。貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、付属明細書などが一般的です。
・財務諸表の確認書
税理士や公認会計士の確認を受けた書類です。
・営業所一覧表(更新)
・営業の沿革
・営業所写真
・納税証明書
法人税または所得税、消費税及び地方消費税の納税証明書が必要です。
・健康保険等の加入状況を確認する書類
健康保険、厚生年金保険、雇用保険の加入状況を確認します。
・国家資格者等・監理技術者一覧表
営業所技術者や監理技術者の情報を記載します。
・誓約書
欠格要件に該当しないことを誓約する書類です。
・身分証明書
役員や専任技術者、法定代理人などの身分証明書などです。
・営業所の所在地に関する書類
建物登記簿謄本、賃貸借契約書など、営業所の存在を示す書類です。
追加で必要になる可能性がある書類
・経営業務の管理責任者に関する書類
経営業務の管理責任者に変更があった場合や、要件を確認するための書類です。常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書などです。
・営業所技術者に関する書類
専任技術者に変更があった場合や、要件を確認するための書類です。営業所技術者等一覧表などです。
・社会保険関係の書類
加入状況に変更があった場合などです。
・使用人数(建設業法第27条の13の規定による書類)
直前1年間の従業員数に関する書類です。
なお、各都道府県により提出書類が異なる場合があります。申請先の都道府県によって、追加で求められる書類や書式が異なる場合があります。事前に必ず申請先の窓口やホームページで確認するようにしてください。
更新の手続き
更新手続きの一般的な手続きの流れは次のとおりです。
1.必要書類の収集・作成
書類は複数の省庁や税務署、年金事務所などで取得する必要があります。最新の様式を確認します。
2.更新申請の提出
許可権者(都道府県または国土交通省)へ、許可満了日の30日前までに提出します。申請窓口は、大臣許可の場合は国土交通省、知事許可の場合は各都道府県庁の建設業担当部署となります。
3.審査期間
提出後、書類審査が行われます。不備があれば補正を求められることもあるため、事前確認が必要です。
4.更新許可通知
審査が通れば、更新が認められ、新たな許可証が交付されます。
更新の注意点
更新手続きで特に注意すべきポイントは次のとおりです。
・期限厳守
更新申請は、許可の有効期限満了日の30日前までに提出が必要です。これを過ぎると失効してしまいます。
・変更届との関係
役員や営業所などの変更があった場合、変更届を事前に提出しておかないと更新手続きができないことがあります。
許可取得後は、有効期間中に役員や所在地、専任技術者などに変更があった場合、その都度、変更届を提出する義務があります。この変更届が提出されていないと、更新申請時に整合性が取れず、審査に支障が出る可能性があります。更新準備の際に、変更届の提出状況も併せて確認します。
・経営業務管理責任者・営業所技術者の要件確認
要件を満たしていないと、更新ができません。要件を満たす証明資料の準備を忘れないようにします。
・有効期間中の変更届の提出漏れがないか確認
許可取得後、有効期間中に役員や所在地、営業所技術者などに変更があった場合、その都度、変更届を提出する義務があります。
この変更届が提出されていないと、更新申請時に整合性が取れず、審査に支障が出る可能性があります。更新準備の際に、変更届の提出状況も併せて確認します。
・財務状況の確認
特定建設業許可の場合、財産的基礎の要件(自己資本額が500万円以上、資本金が2,000万円以上、負債合計額が資本金の20%以下、流動比率が75%以上など)が継続して満たされている必要があります。
一般建設業許可の場合も、自己資本額が500万円以上、または資金調達能力が500万円以上であることが求められます。決算状況によっては要件を満たせず、更新が認められない場合も考えられます。
・健康保険・厚生年金加入
社会保険未加入の場合、行政指導や不許可となる可能性があります。加入状況の証明が求められます。
建設業許可の要件として、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)への加入が義務付けられています。
更新時にも、適切な加入状況であることを示す書類の提出が求められます。未加入の場合や、適切な加入状況ではない場合は、更新が認められない可能性があります。
期限切れの場合
建設業許可の有効期間を過ぎてしまった場合は、原則として更新はできません。許可は失効してしまい無許可状態となるために建設業法違反に該当します。
この場合は、改めて新規許可申請を行う必要があります。ただし、許可番号が変わってしまいます。