電気工事業でも違反は罰則の対象となるだけでなく、社会的な信用を失墜させます。電気工事業法に基づく電気工事士、標識、器具、帳簿に関する規定を解説して、違反しないための対策をご紹介します。
電気工事業法
電気工事業法は、電気工事業の適正な運営を確保し、一般用および自家用電気工作物の安全を守ることを目的とした法律です。
電気工事業を営む者に対して登録や届出、主任電気工事士の配置、帳簿の備付けなどを義務付けています。違反があった場合の罰則規定も設けられています。無資格者による工事の禁止や、標識の設置義務も規定されています。
電気工事の欠陥による災害の発生を防止するために、電気工事業者の登録や業務の適正化、電気工事士の資格制度などを定めた法律となっています。
電気工事業を営むには、原則として都道府県知事または経済産業大臣の登録が必要です。登録なしで電気工事を行った場合や、登録内容に変更があったにも関わらず届け出を行わなかった場合などは、罰則の対象となります。

主任電気工事士
主任電気工事士は、電気工事業者が営業所ごとに配置する必要がある資格者で、電気工事の作業管理や法令遵守の監督を行います。
主任電気工事士になるには、第一種電気工事士の資格、または第二種電気工事士で3年以上の実務経験が必要です。
主任電気工事士が不在の場合、営業所は業務を継続できないため、適切な配置が求められます。
- 主任電気工事士には、次の役割があります。
- 電気工事の施工管理
- 安全対策の指導
- 作業員への技術指導
- 工事の記録管理
主任電気工事士の資格要件として、第一種電気工事士の資格が必要であり、実務経験の要件が定められていて経験年数が不足している場合は、主任としての選任ができません。
電気工事業者は、事業所ごとに主任電気工事士を選任する必要があります。主任電気工事士は、電気工事の作業に従事する者の監督や、電気工事に関する保安の監督を行います。
主任電気工事士になるには、第一種電気工事士または第二種電気工事士の資格を有し、かつ一定の実務経験が必要です。
- 次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 第一種電気工事士:免状交付後、3年以上の電気工事の実務経験
- 第二種電気工事士:免状交付後、5年以上の電気工事の実務経験、または第一種電気工事士の指導監督の下で3年以上の実務経験
主任電気工事士の選任や解任があった場合は、遅滞なく都道府県知事、または経済産業大臣に届け出なければなりません。
標識
電気工事業者は、営業所に標識を掲示する義務があります。標識には登録番号や営業所の名称、主任電気工事士の氏名などが記載されており、法令に基づいて適切に管理されなければなりません。
- 電気工事業者の標識は次の情報を明記する必要があります。
- 事業者名
- 電気工事業の登録・届出番号
- 主任電気工事士の氏名
- 施工可能な電気工事の種類
標識を掲示しない場合、行政指導や罰則を受けることもあるので適切に設置しなければなりません。
標識の様式や記載事項の大きさなどは、電気工事業法施行規則に詳細な規定があります。定められた様式に従い、正確に記載した標識を掲示します。

器具
電気工事に使用する器具は、安全基準を満たしたものでなければなりません。
電気用品安全法(PSEマーク)に適合した器具を使用します。不適切な器具の使用は、事故や法令違反につながるので注意が必要です。
- 注意すべき点は次のとおりです。
- 絶縁性能の確保(感電防止)
- PSEマークが付いた適合品の使用
- 労働安全衛生法に基づく工具の管理
不適合な器具を使用すると火災や感電の原因となるために適切な機材を選定するようにします。
電気用品安全法では、電気用品を「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」に分類し、それぞれに適合性検査や表示に関する義務があります。
電気工事に使用する器具を選ぶ場合は次の点に注意します。
PSEマーク
電気用品には、国の定めた技術基準に適合していることを示すPSEマークが表示されています。このマークのない器具は、原則、電気工事に使用できません。
PSEマークは、電気用品安全法に基づいて電気用品が安全性を満たしていることを示すマークです。電気用品安全法は、電気用品の製造や販売を事業として行う場合の手続きや罰則を定めた法律です。
用途に合った器具
電気工事の種類や場所に合った適切な器具を選定します。使用する器具は定期的に点検して異常がないことを確認します。不適切な器具の使用や管理は、感電や火災などの事故につながります。
帳簿の備付け
電気工事業者は、営業所ごとに帳簿を備え付け、業務に関する記録を適切に管理する義務があります。
帳簿には、工事の内容や契約情報、施工日などを記載して一定期間保存する必要があります。帳簿の不備は、法令違反とみなされることがあります。
営業所ごとに帳簿を備えて、業務に関して注文者の氏名及び住所、 電気工事の種類及び施工場所、施工年月日、主任電気工事士など、および作業者の氏名、配線図並びに検査結果を記載して5年間保存しなければなりません。
違反しないための対策
電気工事業者が法令違反を未然に防ぐには、次の対策を取る必要があります。
法令の確認
電気工事業法や電気設備技術基準の改正情報を定期的に確認します。
関係する関係省庁のガイドラインを確認します。
電気工事士
有資格者を適切に配置して実務経験を積んでおく。
社内での技術研修を実施して最新の法令や技術を習得しておく。
電気工事士の資格や主任電気工事士の選任状況を適切に管理して、必要な手続きをします。
標識・器具・帳簿
事業所や現場に指定の標識を掲示します。定められた様式に従って、見やすい場所に標識を掲示します。
工事で使用する器具や材料が法令に適合しているか確認します。
安全な器具の選定と管理をします。PSEマークの付いた適切な器具を選定して、定期的な点検とメンテナンスを行います。
帳簿を確実に作成して、法定期間は保存する。
社内監査
社内での法令遵守リストなどを作成して定期的に確認する。
問題や事故の場合は、速やかに是正措置を講じます。