クラウド型勤怠管理システムのメリットとデメリットについて詳しく解説します。自社でサーバーなどでシステムを構築するオンプレミス型との違いも説明します。
クラウド型勤怠管理とは
クラウド型勤怠管理システムとは、オンラインで利用できるクラウドサーバーを利用して従業員の勤怠管理をするシステムのことです。
勤怠管理とは従業員の出勤・退勤時間や残業など、勤務状況を管理する業務です。システム化やデータ化されている企業もありますが、手作業や紙で管理している会社もあります。
一般的に社員の勤怠管理はタイムカードなどで行われていますが、勤怠管理のクラウドでは、クラウド型のシステムでオンラインで従業員の勤怠を管理します。
クラウド型の勤怠管理システムは、ICカードや生体認証、専用のアプリなどから打刻ができて有給休暇の申請や残業の申請といった手続きもシステム上でできるようになっています。
インターネット環境があれば場所を問わずにアクセスできる利便性の高さ、初期費用をあまりかけずに導入できることなどが特徴です。
勤怠管理は、コロナ禍以降においてテレワーク、ハイブリッドワーク、短時間勤務、フレックスタイムなどと働き方が多様化していて複雑化しています。勤怠管理にかかる手間が増えて人事労務管理も複雑化した勤怠管理をするようになっています。
勤怠管理クラウドは時間や場所に関係なくアクセスできて、社員ひとりごとに勤怠情報を自動集計してくれます。働き方が多様化した状況に有益な手段となっています。
勤怠管理
勤怠管理の主な目的は過重労働の防止とリスクマネジメントです。労働基準法ではフルタイムの労働時間は1日8時間、週に40時間と定められていますが、労使間で協定を結んだ場合は、残業や早出・休日出勤などの時間外労働が認められています。
労働基準法36条に定められており、さぶろくきょうていと言われています。
ただし、36協定を結べば無制限に時間外労働ができるわけではなく、法律で上限が決まっています。
この規定に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。
労働基準監督署から「是正勧告」を受けた場合は、社名が公表される可能性もあります。
勤怠管理クラウドの機能
勤怠管理クラウドの主な機能
- 勤怠管理クラウドの主な機能は次のとおりです。
- 打刻機能(PCやスマホ、Web、ICカード、指紋静脈認証など)
- リアルタイムで勤怠状況のモニター
- シフト作成・管理
- 休暇/残業申請承認
- 勤怠情報の自動集計
- 給与計算システムなど他システムとの連携
- 長時間労働や打刻漏れのアラート機能
打刻機能(PCやスマホ、Web、ICカード、指紋静脈認証など)
事務所、自宅、外出先など毎日の打刻が正確にできます。
交通系のICカードをスマホにかざすだけで打刻と交通費精算が同時にできたり、パソコンやスマホからのクラウドサービスへのログインして打刻するなど、テレワークやハイブリッドワークにも対応できます。
指紋や静脈認証など、生体を用いた認証で打刻をするサービスもあります。他の社員が代わりに打刻するなどの不正利用を防止できます。
リアルタイムで勤怠状況のモニター
勤怠管理クラウドは集計がリアルタイムに行われます。紙の勤怠の場合、勤怠記入用紙の提出後で月で締めないと勤務時間が把握できないために長時間の時間外労働の把握が遅れてしまいます。
勤怠管理クラウドはリアルタイムで可視化されますので。時間外労働が増加傾向にあるのか減少傾向にあるかを見ながら勤怠管理ができます。
シフト作成や管理
シフトの作成と管理はたいへんです。店舗責任者などの管理職がシフトの作成と管理をしていましたが、従業員にシフトの希望を提出させてExcelなどにまとめ、印刷して各従業員に配布します。
修正があればまたExcelを修正してとたいへんな労力がかかります。
勤怠管理クラウドは、シフト作成・管理を効率化する機能を搭載している製品もあります。
従業員はスマホからの操作でシフト希望を提出して自動的に表に反映され、管理職が操作でシフトの調整をして、シフト表が完成したらネットですぐに各従業員に配布できます。
休暇や残業申請の承認
テレワークやハイブリッドワークの導入で課題になるのがワークフローの効率化です。
勤怠管理クラウドはネットでどこからでもアクセスできます。人事ワークフローである申請・承認を勤怠クラウド内においてできます。ワークフローを効率化することで適切な休暇取得、時間外労働申請を社員に促します。
勤怠情報の自動集計
勤怠管理クラウドでは従業員が入力した勤怠情報を自動集計できるので集計ミスがありません。集計が遅れることもありません。
集計結果はレポート出力もできます。
給与計算システムなど他システムとの連携
給与計算システムと連携して集計した勤怠情報をそのまま例月給与へ反映できます。
長時間労働や打刻漏れのアラート機能
勤怠管理クラウドでは長時間労働や、打刻漏れを管理職に知らせる機能があるサービスが多くあります。
勤怠管理クラウド化のメリット
クラウド型勤怠管理システムのメリットは、時間や場所を問わずに利用できる点や導入コストの削減だけではありません。管理運用に手間がかからないことや、法改正に自動対応できる点も大きなメリットです。給与計算システムとの連携により、給与計算の効率化も図れます。
初期投資が抑えられる
クラウド型勤怠管理・就業管理システムは、システム提供会社が用意したサーバーを利用するので、自社でのサーバ構築費用がかかりません。
自社でサーバーなどでシステムを構築するオンプレミスの場合、多額の初期費用が必要になります。
クラウド型の場合であれば、サービス提供会社に支払う初期費用が無料のものや、比較的安価なサービスもあります。
簡単に導入できる
クラウド型勤怠管理システムは専用のソフトウェアを端末にインストールをする必要がなく、アカウントの作成だけで利用できます。
自社でシステムを構築するオンプレミス型の場合、自社でサーバを構築するので時間と手間がかかります。
システム運用管理業務がいらない
クラウド型勤怠管理システムは、サービス提供会社がサーバを管理するので、自社による運用・管理業務が不要です。
サービス提供会社がシステム自体のメンテナンスを行うので、自社で専任のシステム担当者をつける必要がありません。
業務の効率化
コロナ禍以降、テレワークやハイブリッドワークが普及して働き方も多様化しています。勤怠管理や給与・交通費精算の業務も複雑化し、人事部門の業務も多くなっています。
勤怠管理クラウドを導入することで勤怠状況の集計やシフトの作成などの業務を効率化できます。
給与計算システムとの連携
給与計算システムと連携できるクラウド型勤怠管理システムも多いため、給与計算の自動化がスムーズに手間なく実現できます。担当者の工数の削減や人的ミス防止などのメリットがあります。
いつでもどこでも利用できる
クラウドサーバはオンライン上にあるのでパソコンやスマホなどの端末があれば、いつでもどこでも利用できます。
インターネットに接続している端末さえあれば場所や時間に関係なく利用できます。
テレワークであっても、出社しなくてもパソコンやモバイルデバイスで打刻ができます。出退勤時刻の記録だけでなく位置情報の記録もできるGPS打刻機能を利用すれば、直行直帰や出張、交代制の夜間勤務や休日出勤などにも対応できて不正打刻の防止にもなります。
打刻の不正を防ぐ
サーバー側の時刻の記録とGPSを使った打刻機能で、時間と場所の打刻の不正を防止します。
勤怠状況のリアルタイムで正確な把握
クラウド型の勤怠管理システムであれば社員の労働時間や残業時間、休日労働の時間などをリアルタイムで正確に記録できます。
勤怠の集計と管理時間を削減できます。残業時間をリアルタイムで確認できるので長時間労働がすぐにわかり労働時間管理もできます。
長時間労働を防止することで社員のライフタイムバランスを健全な方向に導けます。
クラウド型の勤怠システムはテレワークや外出先での打刻にも対応してますので社員はスマートフォンなどを使って出退勤の打刻ができます。場所や時間に関係なく柔軟な働き方が可能となって業務効率が上がります。
勤怠データは自動で集計されますので人為的ミスを減少させて正確な勤怠労務管理ができます。
適切な勤怠労務管理ができるようにアラート機能も搭載されていて、出退勤の登録忘れや超過残業をすぐに通知することで、長期間の残業問題などの早期発見と解決ができるようになります。
クラウド型勤怠管理システムを導入することで、人事労務管理の効率化だけでなく社員の労働環境の改善にも効果が期待されています。
勤怠管理業務の負担軽減
クラウド型の勤怠管理システムではデータ化できるのでキャビネットなどの保管場所や勤怠管理業務を軽減できます。
給与計算システムを勤怠管理システムを連携することで効率的な人事業務が実現できます。
クラウド型の勤怠管理システムを利用すると出退勤データの集計が自動で行われ人的エラーを少なくすることができます。正確な勤怠情報をもとにした迅速な給与計算ができます。
クラウド型勤怠管理システムは、データの自動集計機能やリアルタイムの勤怠の把握ができますので人事労務担当者は集計作業をしなくて済みますから業務の効率化となります。
勤怠のデータはクラウドに保存されるのでデータ損失のリスクも少なくなります。テレワークや外出先でも打刻できるので社員の利便性が高くなります。
警告機能が搭載されたシステムでは出退勤の登録忘れや超過残業を自動で通知して適切な労務管理が実施できますので違法な長時間労働の防止にもなります。
法改正の対応
働き方改革として人事労務の法律は度々改正されています。法改正がされてもクラウド型勤怠管理システムであれば社内での対応が必要ありません。
クラウド型の勤怠管理システムは、システムを提供する側が、改正に応じてシステムをアップデートしてくれます。
改正された法に対応できないとコンプライアンス違反として、企業の信頼が落ちてしまいます。
法改正に迅速に対応できる点は大きなメリットであり、システムを通じて集計されたデータは、労務管理だけでなく、経営上のデータとしても活用することができます。
勤怠管理は、労働基準法に規定されています。労働基準法は、改正が頻繁にされているために常に対応が求められます。
クラウド型勤怠管理システムであれば、自動でアップデートによって最新の法改正に対応できるので、法改正の度に自社で変更する必要がありません。
法令順守
時間外労働時間は労働基準法によって規定されており、違反すると経営者が刑事罰を課されることもあります。
リスクを低減するには、時間外労働の状況などをリアルタイムに把握する必要があります。
勤怠管理クラウドによって勤怠管理の打刻・集計・分析・可視化が正確にリアルタイムに行われ企業の法的・社会的リスクを低減できます。
勤怠管理クラウド化のデメリット
クラウド型勤怠管理システムのデメリットは、自社にサーバーを構築して運用するオンプレミス型ほどカスタマイズに柔軟に対応できない点があります。
自社独自の就業規則や既存システムに対応できないこともあります。
導入に負荷がかかることがある
導入では一時的に負担となることがあります。
勤怠管理をクラウド化するにはいろいろ初期設定などをすることになりますし、正常に勤怠情報を集計できるかどうかも確認する必要があります。一時的であっても人事労務担当者に負担がかかります。
社員も新しいシステムに慣れるまでの期間は操作のミスや入力の漏れが発生することもあります。社員へ十分トレーニングやサポートを行ってシステム移行する必要があります。
導入後は、自動集計機能やリアルタイムの勤怠の把握によって長期的には業務の効率化を図れる期待ができます。
従業員は新しい勤怠管理クラウドは初めて使うことになり、仕事のプロセスを変更させられることになります。
勤怠管理クラウド導入をするには、従業員の負担を軽くできるように、ヘルプデスクの設置や、サポート体制を充実することが必要になります。
従業員が慣れるまで時間がかかる
社員も人事担当者も慣れるまでに時間がかかってしまいます。慣れるまでは効率的、効果的にすすめられない場合もあります。
勤怠管理クラウドを導入して従業員が慣れるまでには時間がかかります。
システムを業務に定着させることが重要であり、マニュアルの作成や社内研修の実施、サポートできるヘルプデスクの設置などを行う必要があります。
社内研修などを実施する必要があり、時間と労力を必要となります。導入初期に操作マニュアルやFAQを用意しておく必要もあります。
拡張性が高くない
オンプレミスに比べてクラウド型は拡張性があまりありませんが、製品によってはオプション機能でカスタマイズ対応できる場合もあります。
サーバーなどを自社で構築するオンプレミスの場合、自社でシステムを構築するため他システムとの連携もできますが、クラウド型勤怠管理システムの場合はむずかしくなります。
給与計算システムとの連携については対応可能なシステムがありますが、それ以外のシステム連携の場合は確認が必要です。
給与計算システム以外では、人事管理システムや人事評価システムとの連携に対応する製品もあります。
セキュリティ面は提供元に依存
セキュリティ対策はサービスの提供元に頼るしかありません。社外に情報を出すことになるので利用するサービスのセキュリティレベルは確認する必要があります。
データセンターの物理的なセキュリティ対策やデータのバックアップ、障害対策などが必要になります。