フリーランスは労災特別加入に入れるの?費用はいくらぐらい?

コラム

フリーランスは労災特別加入に入ることができるのか?また、加入した場合に保険料はどれくらいかかるのか?について詳しく説明します。

労災特別加入とは

労災特別加入とは、通常労働者を対象とする労働者災害補償保険(労災保険)に、事業主や個人事業主、フリーランスなどが特例として加入できる制度です。本来、労災保険は雇用されている労働者向けの制度ですが、特別加入を利用することで、業務中の事故や災害に対する補償を受けることができます。

労災保険は、本来、労働者の業務上の災害や通勤災害に対して保険給付を行う制度です。しかし、中小事業主や一人親方など、労働者ではない人も業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる場合があります。

このような人々を対象に、労災保険に特別に加入することを認める制度が「労災特別加入制度」です。特別加入することで、業務上の災害や通勤災害に対して、労災保険の給付を受けることができます。

フリーランスとは

フリーランスとは、特定の企業や団体に所属せず、独立して仕事をする人のことです。IT関係の仕事の場合、プログラマー、デザイナー、ライター、コンサルタントなど、様々な職種があります。

フリーランスとは、企業や団体に所属せずに個人で仕事を請け負う働き方を指します。

  • フリーランスには、次のような職種があります。
    • ITエンジニア・プログラマー
    • デザイナー・クリエイター
    • ライター・編集者
    • コンサルタント・マーケター
    • カメラマン・映像制作者
    • インストラクター・講師

フリーランスは雇用関係がないため、通常の労災保険の対象外ですが、労災特別加入を活用することで補償を受けることができます。

フリーランス(特定受託事業者)が企業等(業務委託事業者)から業務委託を受けて行う事業(特定受託事業)」または「フリーランスが消費者(業務委託事業者以外の者)から委託を受けて行う特定受託事業と同種の事業」(他に特別加入可能な事業または作業を除く)が対象となります。

特別加入の対象となる事業

フリーランスが企業等から受けて行う「業務委託」が対象となります。

「業務委託」とは、企業などがその事業のために他の事業者に、物品の製造、情報成果物の作成(プログラミング等)、役務の提供(通訳等)を委託することです。

フリーランスが企業などから業務委託を受けて行う「事業者間の委託取引」が対象となります。

さらに、企業等から業務委託を受けて事業を行うフリーランスが、当該事業と同種の事業を消費者から委託を受けて行う場合となります。

  • 企業等からの業務委託の例(対象となる事業)は次のとおりです。
    • 翻訳、通訳(外国書籍の翻訳、海外出張時の同行通訳)
    • 講師、インストラクター(ピアノ教室、スポーツジムのインストラクター)
    • デザイン、コンテンツ制作(広報用のイラスト作成、集計プログラム作成)
    • 調査、研究、コンサルティング(商品売買のための市場調査)
    • 営業 [商品(保険、電子機器等)の営業代行]

消費者からの委託の例

企業からの業務委託で宣伝写真の撮影の事業を行っているフリーランスのカメラマンが、消費者からも家族写真の撮影を委託されて事業を行う場合などです。

フリーランスの労災特別加入について

フリーランスは、労働者ではないため、原則として労災保険に加入することはできません。しかし、労災特別加入制度を利用することで、労災保険に加入することができます。

フリーランスが労災特別加入する場合、一人親方として加入する場合と、中小事業主として加入する場合があります。IT関係のフリーランスの場合、一人親方として加入することが一般的です。

フリーランスが労災特別加入するには、以下のような条件を満たす必要があります。

特別加入対象の業種であること

建設業、運送業、医療・福祉、漁業、林業など、一部の業種のフリーランスは特別加入の対象になっています。

労働保険事務組合を通じて加入すること

フリーランスは個人で直接申請することができず、労働保険事務組合を経由して加入する必要があります

対象となる場合

企業等のみから業務委託を受ける場合や、企業等からの業務委託を受け、かつ当該業務と同種の事業について消費者から委託を受ける場合が対象となります。

対象とならない場合

消費者のみから委託を受ける場合や、企業などからの業務委託を受けているが、当該業務とは異なる事業について、消費者から委託を受ける場合は、対象となりません。

たとえば、個人家庭向けのパーソナルトレーナー(スポーツインストラクターの事業)やパーソナルトレーナー(スポーツインストラクターの事業)の場合は対象となりません。

労災特別加入のメリット

フリーランスが労災特別加入するメリットは、以下のとおりです。

・業務上の災害や通勤災害に対する補償

業務中の事故やケガに対する補償が受けられます。治療費、休業補償、障害補償、遺族補償などの給付を受けることができます。

・療養補償や休業補償があるため、収入減少のリスクを軽減できる

・安心して事業を継続できる

万が一の事故に備えることで、安心して事業を継続することができます。

・後遺障害が残った場合の障害補償や、死亡時の遺族補償がある

社会的信用性の向上

労災保険に加入していることで、取引先や顧客からの信頼を得ることができます。

フリーランスの労災特別加入の料金(IT関係の場合)

フリーランスの労災特別加入の料金は、加入する特別加入団体や業種、報酬額によって異なります。IT関係のフリーランスの場合、年間数万円程度の費用がかかることが一般的です。

保険料および被災時の給付額を算出する基礎になるものを給付基礎日額といいます。特定フリーランス事業に従事する者が所得水準に見合った適正な給付基礎日額を16段階のうちから選択して特別加入団体が申請し、労働局長が承認した額が給付基礎日額となります。この給付基礎日額に365を乗じた保険料算定基礎額に第二種特別加入保険料率(3/1,000)を乗じたものが、1年間の保険料となります。

IT関係のフリーランス(プログラマー、デザイナー、ライターなど)の場合、保険料は「給付基礎日額」に基づいて計算されます。一般的な保険料率は以下の通りです。

給付基礎日額年間保険料(IT関係)
25,000 円27,375 円
22,000 円24,090 円
18,000 円19,710 円
14,000 円15,330 円
10,000 円10,950 円
8,000 円8,760 円
6,000 円6,570 円
4,000 円4,380 円
3,500 円3,831 円

IT関係の業務は危険度が低いため、建設業などに比べて保険料率は低めに設定されています。

フリーランスの労災特別加入の補償内容(IT関係の場合)

フリーランスの労災特別加入の保証内容は、一般の労災保険と同様です。業務上の災害や通勤災害によって、怪我や病気、障害、死亡した場合に、以下の給付を受けることができます。

・療養補償給付:治療費、入院費、薬代などの費用が支給されます。

休業補償給付:業務上の災害や通勤災害によって休業した場合に、休業期間中の賃金の一部が支給されます。

・障害補償給付:業務上の災害や通勤災害によって障害が残った場合に、障害の程度に応じて一時金または年金が支給されます。

・遺族補償給付:業務上の災害や通勤災害によって死亡した場合に、遺族に対して一時金または年金が支給されます。

ITフリーランスが労災特別加入した場合、以下の補償が受けられます。

療養補償給付(業務中のケガや病気に対する治療費補償)

休業補償給付(業務ができない期間の補償:給付基礎日額の80%)

障害補償給付(後遺障害が残った場合の一時金または年金)

遺族補償給付(業務中の事故で死亡した場合の遺族への給付)

葬祭料(葬儀費用の補助)

労災特別加入のデメリット

保険料を自己負担する必要がある

労働保険事務組合を通じての加入が必要で、手続きが煩雑になる場合がある

業務外の事故や病気は補償対象外

  • 労災特別加入のデメリットは次のとおりです。
    • 保険料の負担:労災保険に加入するためには、保険料を支払う必要があります。
    • 加入手続きが煩雑:労災特別加入の手続きは、一般の労災保険に比べて煩雑です。

まとめ

フリーランスにとって、労災特別加入は、万が一の事故に備えるための重要な制度です。IT関係のフリーランスの場合、業務内容によっては、労災保険に加入することで、より安心して仕事に取り組むことができます。加入要件や手続き、費用、保証内容について、事前に特別加入団体や労働基準監督署に相談することをおすすめします。

IT関係のフリーランスでも、労災特別加入を利用することで業務中の事故や病気に対する補償を受けることができます。保険料は比較的低めに設定されており、療養補償や休業補償などがあるため、フリーランスのリスク管理の一環として検討する価値があります。