労働安全衛生法と安全衛生法規則について令和7年の改正も解説

コラム

労働安全衛生法と安全衛生法規則について説明するとともに、令和7年の改正で、建設業にかかわりの深い「退避や立入禁止等の措置」、「熱中症対策強化」も詳しく解説します。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法(安衛法)は、労働者の安全と健康を確保して、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律です。

1972年に制定されて、労働災害の防止を中心に、事業者が講ずべき措置や労働者の責務が規定されています。

  • 安衛法では、次のような取り組みが求められています。
    • 危険・有害業務に対する予防措置
    • 労働者に対する健康診断の実施
    • 衛生管理者や産業医の選任
    • 安全衛生教育の実施

このように安衛法では、業種や事業場の規模に応じた安全衛生管理体制の整備を求めており、違反があった場合は罰則の対象となることもあります。

この法律では、事業者に対して、危険防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的な活動の促進など、多岐にわたる措置を講じることを義務付けています。これによって、職場で起こりうる様々な危険性や有害性から労働者を守って、快適な職場環境の実現を目指しています。

労働安全衛生法と安全衛生法規則

安衛法の具体的な運用を定めているのが労働安全衛生規則になります。この規則では、安衛法に基づく政省令の一つとなっており、労働現場の作業方法、設備の管理基準、保護具の使用義務など、詳細な技術的・実務的な基準が定められています。

  • 安全衛生法規則では次のような内容が定められています。
    • 機械設備の定期点検・検査の基準
    • 有害物質の取り扱いに関する安全措置
    • 高所作業や坑内作業など、特定業務に関する保護措置

例えば、労働安全衛生法で「事業者は、機械等による危険を防止するため必要な措置を講じなければならない」と定められているのに対して、安全衛生規則では、具体的な機械の種類ごとに、どのような安全装置を設置すべきか、どのような点検をいつ行うべきかなどが、細かく定められています。

建設業などの事業者は、安衛法と安全衛生法規則の両方を遵守する必要があります。実際の安全衛生活動の現場では、安衛則に従って対策を講じることが求められます。

令和7年改正の熱中症対策強化について

ここ数年は猛暑が続いており、温暖化などの気候変動の影響を受けて、熱中症による労働災害が増加傾向にあります。このことから、2025年(令和7年)には安衛法関連の政省令などが改正されて、熱中症対策の強化が図られることとなりました。

改正の主なポイント

WBGT値(暑さ指数)による作業管理の義務化(一定規模以上の事業場)

高温環境での作業においては、WBGT値を常時測定して、一定の基準を超えた場合には作業中止や休憩、冷却措置の導入が義務化されます。

WBGT値とは、湿球黒球温度、または暑さ指数のことで、気温、湿度、輻射熱(日射・輻射)を考慮して算出される、熱中症のリスクを評価するための指標のことです。

単位は摂氏度(℃)で、気温と同じように表示されますが、値は異なります。WBGTは、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に影響を与える湿度、輻射熱、気温を考慮して算出されます。

暑熱順化の促進

作業者が高温環境に身体を慣らす「暑熱順化」を計画的に実施することが努力義務とされました。

作業前の健康チェックの強化

作業開始前の体調確認が制度化されて、本人申告に加えて管理者による確認も推奨されます。

熱中症発症時の応急措置訓練

熱中症発症時に備えた応急措置マニュアルの整備と訓練が義務付けられます。

熱中症対策以外の改正

化学物質に関する規制強化

近年、新たな化学物質による健康障害が問題となっており、リスクアセスメントの実施義務の拡大や、より詳細なばく露防止措置などが、今後も検討される可能性があります。

退避や立入禁止等の措置

建設業関連で2025年4月から事業者が行う退避や立入禁止等の措置について、次のことがらを対象とする保護措置が義務付けられます。

危険箇所等で作業に従事する労働者以外の人

危険箇所などで行う作業の一部を請け負わせる一人親方など

労働安全衛生法に基づく省令改正により、作業を請け負わせる一人親方等や、同じ場所で作業を行う労働者以外の人に対しても、労働者と同等の保護が図られるよう、必要な措置を実施することが事業者に義務付けられます

労働安全衛生法第20条、第21条及び第25条、第25条の2に関して定められている次の4つの省令で、作業場所に起因する危険性に対処するもの(退避、危険箇所への立入禁止等、火気使用禁止、悪天候時の作業禁止)について事業者が実施する措置が対象です。

・労働安全衛生規則・ボイラー及び圧力容器安全規則・クレーン等安全規則・ゴンドラ安全規則

詳しくは厚労省の次の解説をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001254088.pdf