建設業界では多いひとり親方(個人事業主)ですが、会社組織ではないので会計や税務処理は日ごろ相談する仲間社員もいないので処理がうまくできてないことがよくあります。ひとり親方(個人事業主)の税務でのリスクや気を付けるポイントを詳しく解説します。
一人親方でも「税務署にはバレない」は通用しない
小規模な個人事業主の一人親方だから、細かく帳簿をつけなくても大丈夫だろうという考え方があるかもしれませんが、それは危険です。
一人親方であっても、帳簿がなければ、税務調査となると「推計課税」や「経費否認」を受けるリスクがあります。

建設業は税務調査が入りやすい業種のひとつ
国税庁の「令和4事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」では
建設業は「現金取引が多く」「申告漏れの発生が多い」業種とされています。
「業種目 1件当たりの申告漏れ所得金額 1件当たりの追徴税額(含加算税) の順位(令和5年 国税庁」
1位 経営コンサルタント
2位 くず金卸売業
3位 ブリーダー
4位 焼肉
5位 タイル工事
6位 冷蔵庫設備工事
7位 鉄骨・鉄筋工事
8位 太陽光発電
9位 バー
10位 電気通信工事
*詳しい数字は下記のリンクを参照ください。
建設業関係では、5位、6位、7位、8位、10位と10位までのうち、5つもランクインしています。
たとえ個人事業の一人親方でも、「元請との支払調書」「振込データ」「建設業許可データ」などから容易に実態が把握できるため、税務署に「バレない」ことはありません。
参考サイト:国税庁(令和4事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

確定申告しないリスク
一人親方として個人事業主として、建設業をする場合であっても所得に応じた納税が求められます。確定申告をせずに無申告を続けていると、税務署からの指摘を受ける可能性が高くなってしまいます。税務署に開業届をだして、確定申告をするようにしましょう。確定申告はスマホやパソコンで簡単に申告できます。
正当な理由がなく無申告のままにしていると、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されることとなります。
特に悪質な脱税行為とみなされた場合は、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に処される恐れがあります。
関連法令と罰則
| 法令名 | 内容 | 罰則 |
|---|---|---|
| 所得税法 | 故意に所得税を申告しない、または虚偽の申告をした場合 | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方 |
| 国税通則法 | 税務調査の根拠や加算税の規定 | 行政処分として重加算税(最大40%)が課される |
| 国税徴収法 | 納税義務の履行に関する罰則 | 納付遅延に対する延滞税など |
脱税と申告漏れの違い
脱税
意図的に税金をごまかす行為(売上隠し、経費水増し、無申告など)で刑事罰の対象(懲役・罰金)になります。
申告漏れ
計算ミスや知識不足による過失で行政処分(加算税や延滞税)の対象になります。
加算税とは、国税の過少申告や無申告、不納付などの問題が起きたときに本来の税額に加算して課せられる税金のことです。延滞税は納付期限からの超過日数に比例して課されるペナルティです。
帳簿がないとこうなる「推計課税」のリスク
帳簿や領収書がない場合、税務署などは「推計課税(しょうけいかぜい)」という手法で税額を決めることができます。
推計課税とは?
正確な帳簿がない場合に、過去の売上や同業他社の平均などを基に「このくらい稼いでいるはず」として課税額を決める手法です(所得税法第148条)。税務署長が直接資料によらず、各種の間接的な資料に基づいて推計により所得金額を認定する方法です。
つまり、実際より多めに所得を推定されるケースが多く、非常に不利な結果になってしまいます。
税務署が見ているチェックポイント
| チェック項目 | 税務署の着眼点 |
|---|---|
| 帳簿の保存 | 青色申告者は帳簿の保存が義務(所得税法第143条) |
| 経費の証明 | 領収書、契約書、銀行振込明細があるか? |
| 仕入・材料費 | 実際の作業量と仕入の整合性 |
| 外注費の支払い | 実態が「給与」ではないか?(所得税基本通達36-38) |
| 売上と預金残高 | 売上に対して預金が不自然に少なくないか? |
帳簿をつけていないと青色申告の特典が受けられない
- 一般的に建設業の個人事業主で「青色申告」をしている場合は次のようなメリットがあります。
- 最大65万円の青色申告特別控除
- 赤字の繰越控除
- 家族への給与が経費にできる(青色専従者給与)
しかし、帳簿がなければ、これらの特典を受けられず自動的に白色申告扱いになってしまうので納税額が増える可能性が高まります。
参考サイト:国税庁「青色申告制度について」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
青色申告と白色申告の違い
記帳方法は、白色申告は、単式簿記ですが、青色申告でも簡易簿記での記帳は可能ですが、青色申告特別控除の額は10万円になってしまいます。
提出書類としては、青色申告者は確定申告書に貸借対照表と損益計算書で構成される青色申告決算書を添付しますが、白色申告事業者は、損益計算書と似た形式の収支内訳書を添付します。
貸借対照表については、複式簿記で記帳をしていないと作成できないため、白色申告事業者は提出不要になっています。
青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除をはじめとするさまざまな節税につながる制度があります。
白色申告では事業専従者控除といった一部の制度しか利用できません。
帳簿がなくても“今から”始めれば間に合う
過去に帳簿をつけていなかったとしても、今から記録を取り始めれば、将来の税務調査への備えになります。
- 税務調査対策としてのおすすめとしては次の方法があります。
- 毎月の売上・経費をExcelや会計ソフトに入力
- 領収書やレシートを月ごとにまとめて保管
- クレジットカード・振込明細を保存
- スマホで写真保存+クラウド連携も有効
(まとめ)帳簿は「自分を守るため」
一人親方でも、帳簿をきちんとつけていなければ、税務調査で否認・追徴課税、青色申告の特典消滅、推計課税で本来以上の税負担の可能性が十分にあります。
「ひとりだけっで小規模だから」「忙しいから」と先延ばしにせずに、帳簿は「自分を守る方法」として毎月こまめに記録することが、税務調査対策であり、結果的に最大の節税対策にもなります。



