働き方改革によって、建設業も時間外労働の上限規制や週休2日制の導入がすすめられており、正確な勤怠状況の把握が重要な課題になっています。
建設業では勤怠管理を手書きのタイムシートや日報で行なっている企業も多く、日報が集まらない、手書きで入力漏れや記憶違いの誤った報告が多いとか、現場からの報告に信憑性が欠けるなどの問題があります。
現場への直行直帰が多い従業員や現場ごとに勤務時間が異なる従業員がいることも建設業の勤怠管理がむずかしい原因となっています。
働き方改革の一環として2019年4月に行われた労働安全衛生法改正によって企業が従業員の労働時間を客観的に把握しておくことが義務化されました。
正確な労働時間管理をすることが必要になりましたが、労働時間を管理する上で重要な課題が勤怠管理です。
建設業の勤怠管理システムの意義
建設業向け勤怠管理システムは、スマホの出退勤登録や位置情報の取得、シフト管理や工数管理など、建設業用の機能を搭載した勤怠管理システムとなっています。
建設業界はプロジェクトごとに、さまざまな勤務場所に、多様な職種や勤務形態の作業員が出入りする建設業界です。
働き方改革関連法によって従業員の正確な勤務情報の把握が義務となっていますが、従来のタイムカードやエクセルなどの出勤簿での管理法では課題が指摘されています。
勤務の記録と管理
建設業は、従業員の多くが作業現場など外で勤務するので自己申告制による出勤簿やエクセルでの管理が一般的です。
今はやむをえない事情がない限り、自己申告の勤怠管理方法は禁止されています。その代わりに、タイムカードやパソコンの使用履歴、入退室記録との連携などの客観的なデータによる勤怠情報の管理が推進されています。
従業員の勤務時間をシフト管理する場合は雇用条件に応じて勤務時間の調整や管理が必要になります。従業員が多いとエクセルなどで多様な勤務時間を管理するのたいへんです。
労働時間の記録
働き方改革により労働安全衛生法が改正されて、客観的な方法で適正に把握することが義務となりました。
企業は従業員の就業時間を把握して、そのデータを3年間保管しておく必要があります。
手書きのタイムシートでは、実際の就業時刻と異なった時刻が記載されていても使用者がそれに気がつくことができない場合があります。
自己申告記入制の出勤簿は「客観的管理の観点から外れる」と判断される場合があります。
勤怠管理システムには、勤怠の打刻を指紋認証で行えるものや、GPSで打刻した場所を管理できるものもあります。
労働時間を勤怠システムで管理すれば、恣意的に労働時間を変更して記録することができなくなるため、不正や記入ミスといったこともなくなり、システムによる客観的な管理ができます。
有給休暇の5日利用の推進
2019年4月に改正された労働基準法では、企業は従業員に年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。
建設業は、慢性的な人不足や工期を重視することから、有給休暇の取得率が低い業種となっています。
働き方改革関連法では事業者が従業員に有給休暇を取らせることや、客観的に労働時間を把握することが義務付けられています。
2024年問題への対応
2024年4月から、建設業においても時間外労働の上限規制が適用されました。働き方改革関連法での改正後の労働基準法で、時間外労働の上限が罰則付きで法定化されました。建設業は上限規制が猶予されていましたが、2024年4月から適用されています。
建設業は他の業種と比べると労働時間が長くて休日が少ないという問題があります。ワークライフバランスの観点などから、安定した休日の確保は重要です。
現場作業期間が1カ月以上と想定される工事については、2023年から原則として発注者指定方式により週休2日制が推進されています。
コンプライアンス遵守の意義は大きくなって、遵守できなければ企業イメージに影響を受けます。
そのような状況下において勤怠管理システムが注目されています。
集計を正確に早く
タイムカードや自己申告の手書きの報告書での管理の場合、提出漏れや記入漏れに気がつくのに時間がかかったり集計に手間がかかり、効率も悪く正確な管理ができません。
勤怠管理システムで管理することで勤怠データをシステムで集計して給与計算まで自動で行うことができます。人の手による集計の必要がなくて正確に管理することができます。
システムのアカウントと社員番号を紐づけることで日報と記入時間もシステムで一元管理ができます。勤怠管理に従事していた人事担当者の業務工数を削減できます。
不正打刻の防止
従来のタイムカードや日報での勤怠管理は、直行直帰の従業員への対応が問題でした。
現場で打刻ができないので事業所にいる人に代理打刻を依頼することも多くありました。不正打刻の可能性があるほか、正確な勤怠状況の把握がむずかしくなります。勤怠管理システムはスマホやタブレットでの打刻に対応しています。
GPS機能やスマホを用いた顔認証打刻であれば、タイムカードや日報での不正打刻も防止できます。修正した履歴も残るので改ざんできなくなっています。
労務管理
建設業の深刻な人手不足を解消するために2024年4月より時間外労働の上限規制と週休2日制が適用となりました。
期中においても残業時間や有給休暇を管理する勤怠管理システムによる労働状況のタイムリーな把握が求められています。
建設業における勤怠管理システムのメリット
勤怠管理システムを導入によって勤怠データの集計や給与計算を自動化して勤怠管理業務の効率化が可能になります。
複雑な勤務体系
建設業は、従業員により勤務場所や勤務時間もさまざまであるために勤怠管理がむずかしくなっています。
勤怠管理システムであれば、シフト制やフレックス制、1日に複数の現場を掛け持ちする場合、日をまたいだ勤務にも対応できます。勤務をリアルタイムで把握)
月末などの締め日に勤怠データを回収して集計していては残業時間の上限超過に気づくのが遅くなり、法令違反を見つけ出すことができません。
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を課せられます。勤務状況をリアルタイムに把握し、残業超過を防ぐ対策が必要です。
勤怠管理システムは、日々の勤怠状況や総労働時間をモニタリングできますし打刻忘れや残業超過の場合、アラート通知機能が搭載されたシステムあります。
法を遵守した客観的な勤怠データの記録と残業時間や有給休暇の管理もできます。
シフト管理業務の効率化
勤怠管理システムは、シフト作成・管理機能のあるシステムもあります。
自動でシフト作成できるシステムであれば建設工程や内容に応じた適正な人員配置ができます。
週休二日制度や残業時間の上限に対応した勤務スケジュールを作成できて、システム上で出勤管理もできます。
勤怠管理システムの特徴
スマホやタブレットでの打刻
スマホやタブレットに対応するシステムであれば、アプリや専用ブラウザから出勤や退勤の打刻ボタンを押すだけで勤怠情報を送信できます。
LINEなどのアプリでの打刻に対応したシステムもあるため打刻専用のアプリを新たにインストールする必要もなく利用できます。
共用のタブレットを現場に設置すれば、個人のスマホを利用することなく対応できます。
GPS打刻による不正防止
出勤したと偽って打刻するといった不正を防止する場合は、打刻時に位置情報を取得できるGPS打刻に対応の勤怠管理システムを利用することができます。
勤務状況のリアルタイム確認
従業員の出退勤データは自動集計されて、インターネット上の管理画面からいつでも確認できます。
月末にタイムカードや日報を集めて、転記や集計する必要はありません。入力ミスやチェックもれなどのリスクもなくなります。
従業員の作業労働時間をリアルタイムに把握できるようになるので、労務管理がスムーズに行えます。
月末でなくても残業時間が一定量を超過した従業員には自動でアラートを通知して対策をすることもできます。
集計した勤怠データを利用中の給与計算システムにそのまま連携できるシステムもあります。
シフト表の作成
シフト表の作成に対応する勤怠管理システムもあります。
作成したシフト表と勤務実績が自動で照合されるので勤務時間や残業時間を管理する労力が軽減されます。
あらかじめ休日出勤や深夜残業などに区分した時給や日給・月給を登録できるシステムもあり給与計算だけでなく人件費をリアルタイムで確認することもできます。
工数管理
各従業員のプロジェクトやタスクを登録・管理できる工数管理に対応したシステムもあります。
従業員が入力した工数データを自動集計して従業員やタスクごとにグラフ化やデータ分析ができるので各従業員の勤怠情報だけでなく現場の情報もすぐに把握できるようになります。
外国人対応
現場では外国人の従業員が多くいる場合もあります。
英語などの外国語に対応することもできます。勤怠管理システムによっては表示画面を英語に切り替えられるものもあります。
建設業用の勤怠管理システムの選定について
現場への直行直帰やいろいろな勤務形態など、建設業の要件に対応したシステムの中から、自社にはどの機能が必要かを決めることが重要です。
スマホ打刻
現場作業が多い建設業では、スマホを使った打刻やGPSを使った位置情報を記録できるGPS打刻に対応したシステムがおすすめです。
不正を防止できるだけでなく災害などの緊急時に従業員の現在地を確認できます。
シフト管理
シフト体制の業務には、シフト・スケジュール管理機能を備えた勤怠管理システムがおすすめです。
工数管理
勤務時間だけでなく、プロジェクトごとに工数を管理して稼働状況をモニターしたい場合は、工数管理にも対応したシステムを選ぶとよいでしょう。
プロジェクトごとの予算や単価の情報を入れることで予実管理ができます。
スマホアプリやブラウザから工数を登録できるので社外で働く従業員の負担軽減にもなります。
建設業向け勤怠管理システムの料金
クラウド型勤怠管理・就業管理システムは、システム提供会社が準備したサーバーを使うのでサーバー構築費用が不要です。
自社でシステムを構築するオンプレミスの場合であれば100万円程度の初期費用がかかります。
クラウド型の場合は、サービス提供会社に支払う初期費用が無料の場合や安いサービスもあります。
初期投資を低くしたい企業や、従業員規模応じてシステムの見直しがある企業に適しています。
クラウド型であれば、月額100円~600円ですが、多いのは200円~300円といったところです。
建設業の勤怠管理システムの選定ポイント
- 次のようなチェックポイントがあります。
- 勤怠管理システムの種類
- 自社の勤務形態にあった打刻
- 残業時間・有給取得状況のモニタリング機能
- 工数管理・日報管理・工事原価管理機能など
- 残業や有給休暇の申請・承認機能
- スマホでのGPS打刻に対応
- 作業シフトや工数管理ができるシステム
勤怠管理システムの種類
勤怠管理システムは、打刻機能に特化した製品、給与計算・入退社手続きなどの業務に対応するシステムなどさまざまあります。
独自の勤怠ルールや雇用体系にあわせて柔軟にカスタマイズできる製品もあります。自社の必要な機能や導入目的に応じてどのようなシステムを導入する検討してみます。
自社の勤務形態にあった打刻
内勤、外勤や夜勤などのさまざまな勤務体系に対応するシステムがあります。
社外での打刻にはスマホから出退勤操作ができるクラウド型の勤怠管理システムがよいでしょう。
不正打刻の防止を重視する会社は、生体認証やGPSを用いたアプリ打刻に対応した製品が適しています。
残業時間・有給取得状況のモニタリング
残業時間や有給休暇の取得状況をモニタリングできる製品であれば、従業員の勤怠状況の把握ができます。
アラート機能があれば残業時間を超過しそうな場合には、スマホやパソコンで従業員や管理者に通知が届きます。
建設業界特有の機能
建設業界特有の機能が搭載されていたり必要な機能をカスタマイズできたりできると業務も効率化できます。
・工数・日報管理
現場ごとの日報・工数管理
・シフト管理
シフトの自動作成・配布・希望シフトの回収など
・工事原価管理
勤怠管理集計と工事ごとの労務費集計
残業や有給休暇申請・承認機能
多くの勤怠管理システムには、事業所外で残業や有休を申請や承認できる機能が搭載されています。
現場作業での残業や、急な休みにも申請から承認まで対応できます。
スマホでのGPS打刻に対応しているシステム
建設業では作業現場での使用が多くなっており、スマホでGPS打刻に対応したものがよい。パソコンやタブレット端末は、現場へ持ち込みがむずかしい。
スマホは現場の従業員も常に持ち歩けるので、GPSを利用した位置情報の取得とともに打刻することができます。
GPS打刻は不正防止にもなり、災害や事故などの緊急時にも作業員の現在地がわかるので安全対策にもなる。
GPS打刻は、スマートフォンやタブレットのGPS機能を利用して専用のアプリケーションから打刻してもらう勤怠管理方法です。
使用デバイスのGPS機能をONにしておけば、従来のタイムカードと違って従業員が外出した出先のどこで、いつ出退勤したかという情報を把握できます。
別々の現場を担当している複数の従業員それぞれの出勤場所を把握して、正確な勤務記録を残すことができます。
GPS打刻アプリでは、位置情報を利用して打刻が有効となる場所の範囲を設定できるものがほとんどです。
設定したエリアに出勤していなければ、打刻通知を送ることができません。
作業シフトや工数管理ができるシステム
シフト制を採用している現場も多くあります。シフト制での作業であれば、シフトに対応できるものを選ぶことになります。
工事の工数にも対応できるように工数管理ができる建設業向けの勤怠管理システムがおすすめです。
プロジェクトに応じた工数管理を実施することで稼働状況が把握できます。従業員の働き方を見える化して生産性の向上になります。
工数管理機能(日報入力機能)
日報入力の機能があれば労働時間のデータとあわせて、工事労務費の集計も自動で行うことができます。
工事や現場作業員別の労務費集計データから労務費の把握ができて原価管理や業務効率化になります。
休暇管理機能
勤怠管理システム、長時間労働を防止するためのアラートや、有給休暇が使える時期になるとアラートが出るなど、各種アラート機能が充実しているものもあります。
誰がいつ休暇をとるのか可視化できて、現場の人数調整をスムーズにできるようになり、従業員が休みを取りづらいという課題の解決にもなります。