建設業の会計ソフト弥生(やよい)の利用と建設業会計と一般会計との違いについて

コラム

建設業の会計処理は複雑で、一般の会計ソフトでは対応しきれない部分もあります。そこで会計ソフトでは有名な「弥生(やよい)」シリーズの活用方法と、建設業会計と一般会計の違いについて詳しく解説します。

会計ソフト弥生(やよい)シリーズとは

弥生株式会社が提供する「弥生シリーズ」は、中小企業や個人事業主向けに開発された業務ソフトウェアで、会計、給与、販売管理などの分野に対応しています。その使いやすさと豊富な機能が特徴で、日々の記帳から決算書の作成、税務申告まで、幅広い会計業務をサポートします。

「弥生会計」は、青色申告・白色申告への対応はもちろん、仕訳入力、帳簿作成、決算書作成まで一貫して行えることが特徴です。

弥生シリーズには以下のような製品ラインアップがあります。操作性に優れていて、導入のしやすさやサポート体制も充実しているということで経理の専門知識が浅い中小企業などで広く利用されています。

弥生会計(スタンダード/プロフェッショナル)

日常の取引入力から帳簿作成、決算書の作成まで、会計業務全般に対応したスタンダードなソフトです。

プロフェッショナルは、複数部門管理や高度な分析機能など、より複雑な会計ニーズに対応した上位版になります。

弥生会計オンライン

クラウド型の会計ソフトで、場所を選ばずにアクセスでき、自動仕訳機能や銀行連携機能など、効率的な会計処理を支援します。

弥生給与/やよいの給与計算

給与・賞与・年末調整などの人事労務管理をします。弥生給与は、従業員100人程度の企業向けで、弥生給与 Nextというクラウド版も提供されています。やよいの給与計算は、従業員30人以下の小規模企業向けで、よりシンプルで使いやすい設計となっています。

やよいの青色申告/白色申告

個人事業主向けの簡易的な会計ソフトです。やよいの青色申告は個人事業主向けの会計ソフトで、青色申告に必要な帳簿作成や決算書作成をサポートします。やよいの白色申告 オンラインはクラウド型の個人事業主向け会計ソフトで、手軽に白色申告の準備ができます。

弥生(やよい)シリーズの建設業での利用について

建設業は、製造業や小売業と比べて、物件の完成までに時間がかかるなど、取引が特殊なところがあって、会計処理にも独自の要件があります。

たとえば、長期にわたる工事契約、前受金や未成工事支出金など特有の勘定科目、工事台帳の管理などがその例です。

弥生シリーズは、工事原価計算を効率的に行うための機能を搭載しています。具体的には、次のような機能が建設業の会計処理をサポートします。

工事台帳の作成・管理

工事名、工期、契約金額、担当者などの基本情報を登録し、各工事の進捗状況や収益・費用を一覧で管理できます。

労務費、材料費、外注費などの直接費の管理

各工事に直接かかる費用を個別に集計・管理できます。

共通費の配賦

本社経費などの共通費を、合理的な基準に基づいて各工事に配賦できます。

完成工事高と完成工事原価の集計

完成した工事の収益と原価を集計し、工事ごとの利益を把握できます。

未成工事支出金の管理

まだ完成していない工事にかかった費用を管理し、適切な資産計上を行います。

支払管理・請求管理

下請業者への支払いや、発注者への請求に関する業務を効率化できます。

(建設業特有の勘定科目の設定)

建設業でよく使用される勘定科目が初期設定されており、スムーズな導入ができます。

建設業会計と一般会計との違い

建設業会計は、他の業種と比較して次のような点で特徴があります。

収益の認識方法

一般会計では、商品の販売と同時に売上を計上しますが、建設業会計では、完成基準または進行基準によって収益を認識します。(長期契約会計基準)

建設業では、工事の進捗度合いに応じて収益を認識する工事進行基準や、工事が完成した時点で収益を認識する工事完成基準といった、特殊な収益認識基準が用いられます。

特有の勘定科目

未成工事支出金(工事途中の原価を計上する資産項目)、完成工事未収入金(完成したが請求前の売掛金)、前受金/完成工事前受金(着手前に受け取る工事代金)などがあります。

工事単位での原価管理

建設業では各工事ごとに原価を集計や分析する「工事別会計」が必要になります。工事台帳、出来高管理、現場別予算実績の把握などが日常的に行われています。

個々の工事の収益性を正確に把握するためには、詳細な原価計算が不可欠です。労務費、材料費、外注費などの直接費に加えて、共通費の配賦など、複雑な原価計算が必要となります。

建設業会計と会計ソフト弥生(やよい)シリーズ

弥生(やよい)シリーズは、建設業会計特有の要請に応えるための機能を備えています。工事台帳機能による工事ごとの収益・費用管理、未成工事支出金の管理機能、建設業特有の勘定科目の初期設定などは、建設業の会計担当者にとって役立ちます。

工事進行基準に対応した収益認識や、複雑な原価計算をサポートする機能は、手作業では煩雑になってしまいますが、このソフトを使うことで建設業会計の効率化に大きく貢献します。経営事項審査に必要な財務諸表の作成をサポートする機能も、弥生シリーズの一部の製品に搭載されています。

弥生は、経営事項審査(経審)の申請書類作成を支援するソフト「JSI 工事台帳 lite」も提供しています。このソフトは、弥生会計のデータを取り込んで工事台帳を簡単に作成・管理できるのが特徴です。

経営事項審査(経審)とは、公共工事を直接請け負う建設業者に対して、国や地方公共団体などが発注する公共工事の競争入札に参加するために必要な、経営状況や技術力などを評価する審査のことです。