建設業の個人事業主と税金、一人親方も個人事業税を払わないといけないの?

コラム

建設業の個人事業主、一人親方の方々が関わる税金の中でも、「個人事業税」について詳しく解説します。

一人親方と個人事業主

建設業における「一人親方」とは、会社に雇用されずに個人として元請け会社や他の業者から仕事を請け負って、自ら事業を行う方を指している「俗称」です。法律上の明確な定義があるわけではありませんが、税務上は「個人事業主」となります。

一人親方が得た事業所得は、給与所得とは異なって、ご自身で毎年確定申告を行う義務があります。その確定申告の結果に基づいて所得税、住民税、そしてこの個人事業税などの税金が課されることになります。

個人事業税とは

個人の方が営む事業のうち、特に法律で定められた事業に対して課される県税です。現在70ほどの業種があり、ほとんどの事業が該当します。

個人事業税は、都道府県が課税する地方税の一つです。事業をしている個人が、その事業をするために利用している都道府県の公共サービス(道路、消防、警察など)の経費を一部負担するという考え方に基づいています。

課税対象者

法定された70の業種(法定業種)に該当する事業を営んでいる個人事業主

計算方法

個人事業税額 = (事業所得 – 各種控除 – 個人事業主控除290万円) × 税率

このように所得から290万円という控除があるので、事業所得が少ない場合には課税対象になりません

確定申告をすれば、都道府県から後日、個人事業税の納税通知書が届きます。個人事業税の申告をする必要はありません。

多くの業種で税率は5%となっていますが、一部例外もあります。

建設業と個人事業税

建設業は個人事業税の課税対象となります。建設業は法定業種に該当しています。建設業に従事する一人親方や個人事業主は、原則として個人事業税の課税対象となります。

具体的な法定業種名としては「請負業」が該当します。これは、元請けから工事を請け負う「一人親方」も該当します。

ただし、個人事業税の納税義務が発生するのは、先の計算のとおり、事業所得が290万円を超える場合に限られています。

事業所得290万円以下の場合であれば、個人事業税はかかりません。事業所得290万円超の場合に超過した金額に対して税率(通常5%)が課されます。

個人事業税と確定申告

個人事業税は、確定申告の「事業主控除」や「所得控除」とは異なって、確定申告書自体に金額を記載する欄はありません。

しかし、確定申告は必要なので注意が必要です。確定申告で提出する「収支内訳書」や「青色申告決算書」に記載された「事業所得」の金額を、都道府県が確認するからです。

こうして、提出された確定申告書の内容が都道府県が確認や計算をして毎年、8月頃に納税通知書が送付されてきて、8月と11月の2回に分けて、納付することになります。

個人事業税の納税義務があるかどうか、またいくらになるかは、確定申告の事業所得の金額次第となるわけです。

個人事業税と青色申告

個人事業主の確定申告には、「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。

青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。この控除額は、個人事業税の計算にも関係してきます。

青色申告の場合

青色申告特別控除65万円を差し引いた後の事業所得で、個人事業税が計算されます。事業所得が65万円分少なく計算されるので、個人事業税を節税できる効果があります。

たとえば、白色申告で事業所得360万円だった場合

個人事業税=(360万円 – 290万円)× 5% = 3.5万円

青色申告で事業所得360万円だった場合

青色申告特別控除65万円を差し引く
課税所得=360万円 – 65万円 = 295万円
個人事業税=(295万円 – 290万円)× 5% = 2,500円

このように、青色申告をすることで個人事業税の金額を抑えることができます

さらに、青色申告であれば、赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を経費にできるなど、多くのメリットがあります。

青色申告とは

青色申告は、基本的に1月1日から12月31日までの1年間の取引を複式簿記で記載した帳簿を基に申告を行います。

青色申告には青色申告特別控除という節税になる制度がありますが、原則として帳簿は複式簿記で記載しなければなりません。確定申告では、帳簿に記載された売上と必要経費を基に年間の所得金額を計算して、所得税額を算出しますが、青色申告特別控除が適用できれば、所得金額から最大65万円を差し引くことができます。

青色申告と白色申告の違い

記帳方法は、白色申告であれば単式簿記になります。青色申告でも簡易簿記での記帳はできますが、青色申告特別控除の額は10万円になります。

提出書類は、青色申告者の場合は、確定申告書に貸借対照表と損益計算書などの青色申告決算書を添付しますが、白色申告事業者は、損益計算書のような形式の収支内訳書を添付します。貸借対照表については、複式簿記の記帳でないとできないので白色申告事業者は提出しません。

青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除など節税になる制度がありますが、白色申告では事業専従者控除といった一部の制度しか利用できません。