建設業の週休2日は義務?それとも推奨?一人親方は?働き方改革も解説

コラム

長時間労働が常態化が問題になっている建設業において、現状、週休2日制となっているのか?義務化されるのか?について詳しく解説します。

建設業における週休2日の現状

建設業界では、工期の厳しさや人手不足などから、週休1日や隔週休2日といった勤務形態が一般的です。中小企業や個人事業主の場合は、完全週休2日制の導入は難しいとされてきました。

しかし、若年層の就労離れや高齢化の進行、人材確保から週休2日制導入の必要性が高くなっていますが、現時点でも完全な週休2日制となっている事業所は限られており、業界全体では「努力目標」となっています。

国土交通省の調査(令和4年度建設工事施工実態調査など)でも、週休2日としている工事の割合は増加していますが、他の産業と比較すると低くなっています。

週休2日制への国交省の取り組み

国土交通省は「週休2日の工事推進」の方針を掲げて、公共工事を中心に取り組みをすすめています。

公共工事では週休2日を確保する前提で工期を設定したり、週休2日工事の評価制度を取り入れて総合評価落札方式における加点対象としています。

地方整備局や自治体との連携によって週休2日モデル工事も実施しています。「建設業働き方改革加速化プログラム」は2024年3月に改定され、2024年度以降、週休2日取得率が工事成績評定に反映される方向となっています。

週休2日は義務?それとも推奨?

労働基準法第35条では「毎週少なくとも1回の休日(週1日)」または「4週間を通じて4日の休日(4週4休)」が使用者に義務づけられていますが、週2日の休みを法律で義務とする規定はありません

【労働基準法 第35条】
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
ただし、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については、この限りでない。

したがって、「週休2日」はあくまで法的義務ではなく、行政指導・政策的推奨となっています

現時点では義務ではなく「推奨」にとどまっています。週休2日制の導入は努力義務にとどまっており、法令で義務付けられているわけではありません

ただし、公共工事においては事実上の「準義務化」がすすんでおり、入札・落札の要件に影響するなど、実務的には2日制がすすんでいるのも事実です。

民間工事については事業者の自主判断によるため、業界全体での導入率にはばらつきがあります。

週休2日はいつごろ義務化される?

現時点で「完全義務化」の時期は明確になっていませんが、2024年4月からの時間外労働の上限規制(建設業の猶予撤廃)との関係で、義務化に近づいています。

2024年以降は、時間外労働の上限(月45時間、年360時間など)が導入されて、週休2日工事の評価への組み込みなどを通じて、法的義務にはならなくても、制度的や運用的な2日制は増えると予想されています。週6日稼働を継続していては、時間外労働規制に抵触する可能性が高くなるため、実質的に週休2日を導入せざるを得ない構造ができあがっています。

義務化された場合の建設業への影響

週休2日が実質的に義務化されれば、建設業界にこのような影響があるとされています。

今までの前提である6日稼働でなくなるために設計から契約、施工まで全体の見直しが必要になります。

休工日の増加によって、1日当たりの作業密度向上が求められので、工事費用が増加します。

しかし、労働環境改善によって若年層の入職や離職防止となる可能性もありますし、疲労による事故のリスクが低減し、事故が減るなど安全性の向上が期待できます。

義務化された場合の個人事業主の取り扱い

労働基準法は、事業主が労働者を雇用する場合に適用される法律です。したがって、労働者を雇用していない個人事業主(一人親方など)については、労働基準法上の「週休2日」の義務は直接的には適用されません。建設業には一人親方(個人事業主)がたくさんいますが、法的に週休2日を義務づけることはできません。

ただし、元請からの業務依頼が週休2日制前提で組まれるようになると、実質的に週休2日となる可能性があります。

また、公共工事では、元請けが下請けを含めた工事全体での週休2日達成を求められる可能性があります。その場合、個人事業主も実質的に週休2日を確保できるような働き方を求められることになります。

その他の建設業における働き方改革

週休2日制の推進以外にも、建設業における働き方改革はいろいろあります。

ICT(情報通信技術)の活用ではドローンによる測量、BIM/CIMによる情報共有、遠隔操作重機など、ICTの活用により、生産性向上と省人化を図り、労働時間の削減につなげます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進でも業務プロセスのデジタル化により、書類作成時間の短縮や情報共有の円滑化をすすめています。

女性の活躍推進、建設業で働く女性を増やすための環境整備や、キャリアパスの多様化を進めます。

高齢者の活躍推進、経験豊富な高齢者が安心して働き続けられる環境を整備します。

ハラスメント対策の徹底、職場におけるあらゆるハラスメントの根絶を目指し、働きやすい職場環境を構築します。

適正な請負代金の設定、適切な利益を確保できるよう、発注者・受注者間で適正な請負代金の設定に努めます。これにより、労働者の賃金向上や週休2日制導入のための原資確保が可能となります。