建設業の電気工事と電気通信工事の違い、オフィスLAN工事やEV充電設置は?

コラム

電気工事と電気通信工事の違いをオフィス事務所のLAN工事や電気自動車(EV)充電設備の設置工事で詳しく解説します。最後に、ご参考まで、EV充電設備設置における補助金制度についても触れておきます。

建設業法の電気工事とは

建設業法における電気工事業は、電気を使用するための設備に関する工事全般のことです。

具体的には、発電設備、変電設備、送配電線設備、屋内電気配線設備などの設置や改修を行う工事となっています。

電気工事は、高圧や低圧の区別に関係なく、電気が流れる設備に直接的に関係する工事であって、一定規模を超える場合には「建設業許可」の取得が必要になります。

また、作業内容によっては「電気工事士法」に基づく有資格者による作業が必要になります。

建設業許可とは

建設業において、原則として建設業許可が必要になります。請負金額が税込みで500万円以上、建築一式工事の場合は1500万円以上または延べ面積150平方メートル以上の木造住宅の工事を行う場合に、国または都道府県から取得しなければならない許可のことです。

築一式工事とは、建築物を建設する工事で、総合的な企画、指導、調整のもとで行われる工事のことです。元請業者として、大工工事、内装工事、電気工事など、さまざまな専門工事をまとめた上で、建築物の完成を担う工事のことです。例えば、住宅の新築やリフォーム、建物の改修などがこれにあたります。

建設業法の電気通信工事とは

電気通信工事業は、通信設備に関係する工事を対象としています。電気信号による情報の送受信に関わる設備、電話回線、インターネット回線、LAN配線、放送設備、監視カメラ、インターホンなどの設置・配線工事などが含まれています。

通信の内容や情報のやり取りを目的とする設備であって、たとえケーブルを使用していても、電気を供給することが目的ではなく、情報伝達が目的となっていることが特徴です。

電気通信工事も一定程度の規模以上の工事となると建設業許可の取得が必要になってきます。

電気工事と電気通信工事の違い

電気工事と電気通信工事はどちらも電線や配線を用いた作業が中心ですが、その目的に違いがあります。

項目電気工事電気通信工事
目的電力の供給情報の送受信
設備分電盤・照明・コンセントなどLAN・電話・監視カメラなど
根拠法令電気事業法、電気工事士法電気通信事業法、建設業法
必要資格第二種電気工事士 など特定なし(ただし技術要件あり)

工事の内容などが同じようであっても、目的が電力の供給であれば電気工事に、目的が情報の伝達であれば電気通信工事となります。

オフィスLAN工事の場合

オフィス事務所のLAN工事は、パソコンやネットワーク機器を接続するための配線作業が中心であり、電気通信工事になります。

床下や天井裏にLANケーブル(カテゴリ5e、6など)を敷設して、情報コンセントに接続する作業などの工事ですがLAN工事においては、電力供給は伴わず、ネットワークでの通信が主な目的ですので、電気工事業の許可は不要であって、電気通信工事業の建設業許可が必要となることががあります。税込みで500万円以上の請負金額がある場合などが該当します。

ただし、HUBやPoEスイッチなど電源が関与する機器を設置する場合でも、その配線作業が電力供給を目的としない限り、原則は電気通信工事に該当します。

電気自動車の充電設備設置の場合

EV(電気自動車)の充電設備設置工事は、電気工事に該当します。これは充電器へ電力を供給するための配線工事なので典型的な電気工事です。

専用回路の増設や分電盤の改修、高圧受電設備との接続などを含む工事も多く、電気工事士の資格を持つ技術者が必要になります。

税込みで請負金額500万円以上一定規模の工事であれば、「電気工事業」の建設業許可が必要となります。

(ご参考)電気自動車の充電設備設置の補助金

EV充電器の設置には、国や自治体が実施する補助制度が活用できます。例としては次のものなどがあります。

経済産業省系「充電インフラ補助金」

民間事業者やマンション管理組合などが対象で、充電器本体や工事費の一部を補助します。EV本体の購入と合わせて充電設備設置費の一部を補助する制度です。個人だけでなく、法人も対象となる場合があります。

環境省の「地域脱炭素交付金」

地域単位でのインフラ整備に対して、包括的に支援される場合があります。地方公共団体が実施する再エネ導入やEV充電設備設置プロジェクトに対して交付されるもので、設置場所や内容によって対象となる可能性があります。

地方自治体の独自補助制度

多くの都道府県や市町村が、EV充電設備の設置に対して独自の補助金制度を設けています。補助対象や補助額は地域によって大きく異なりますので、設置場所の自治体の情報を確認することが重要になります。