建設業法令遵守ガイドラインの違反、事例などをわかりやすく解説

コラム

土木工事、建築工事、電気工事などの建設業は、社会のインフラの整備や国民生活を支える重要な役割があり、法令遵守、コンプライアンスが重要です。国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインをわかりやすく解説します。

建設業法令遵守ガイドラインとは

建設業法令遵守ガイドラインは国土交通省が定めた指針です。建設業者が法令を遵守し、適正な施工体制や取引のための事項を整理して遵守すべき基準を示しています。

国土交通省が中心となって公表しており、建設業者が法令違反を未然に防ぐことを目的としています。

ガイドラインでは建設業法をはじめ、独占禁止法、下請法、労働基準法、建設工事での安全衛生の法令などの法律や政省令を対象としています。

建設業法令遵守ガイドラインの趣旨

ガイドラインの趣旨は、建設業界全体の透明性を向上させ、公正な取引や適正な施工を推進することです。

公正な競争環境

法令に基づいた適正な取引や事業活動を促進して建設業界の公正な競争環境を整備する。

下請業者への適正な支払いの確保、不当な代金未払い・支払い遅延の防止など

健全な事業運営

法令遵守で持続可能で健全な事業運営を行う。

無許可業者との取引防止、適正な建設業許可制度の維持、施工品質の確保と安全管理の強化、手抜き工事や安全違反の防止など

労働環境の改善

労働基準法や労働安全衛生法などを通じて建設業で働く人の労働環境を改善する

建設労働者の適正な雇用・労働環境の確保(偽装請負・長時間労働の防止)

建設業法令遵守ガイドラインの内容

建設業法

建設業許可

無許可営業の禁止、許可区分の確認、許可更新の手続きなど

契約の締結

請負契約書の作成・交付義務、不当な低価格での請負契約の禁止など(建設業法第19条)。

施工体制

下請契約の適正化、一括下請負の原則禁止(建設業法第22条)、主任技術者・監理技術者の配置義務(建設業法第26条)。

現場管理

適正な施工管理、品質管理、工程管理の実施。

独占禁止法・下請法

不当な取引制限

他の事業者と共同して価格を決定したり、入札で談合したりする行為の禁止(独占禁止法第3条)

不公正な取引方法

優越的な地位を利用した不当な廉価買い叩き、支払遅延、下請代金の減額などの禁止(下請代金支払遅延等防止法)

下請契約の書面化

下請契約締結時の書面交付義務、記載事項の遵守(下請法第3条)。

労働基準法・労働安全衛生法

労働時間・休憩・休日

法定労働時間の遵守、適切な休憩時間の付与、法定休日の確保(労働基準法第32条、第34条、第35条)

賃金の支払い

毎月一定期日払いの原則、割増賃金の支払い(労働基準法第24条、第37条)。

安全衛生管理体制

作業現場における安全管理体制の構築、安全衛生教育の実施、危険源の除去・低減(労働安全衛生法第10条、第19条)。

労働災害の防止

作業手順の確立、保護具の着用義務、健康診断の実施(労働安全衛生法第20条)。

具体的な違反(違反のおそれがある)事例

建設業法違反の事例

許可を受けた業種のみ施工、無許可業者への発注は禁止され、要件は経営業務の管理責任者や専任技術者の要件を満たさなければなりません。

無許可営業

建設業の許可を受けずに、一定規模以上の建設工事を請け負った。(建設業法第3条)

不適切な契約書の作成

下請工事に関し、書面による契約を行わなかった。

下請契約において、工期や請負代金などの重要な事項を記載した書面を交付しなかった。(建設業法第19条)

一括下請負の禁止違反

発注者から許可を得ずに、請け負った建設工事の全部を第三者に下請負させた。(建設業法第22条)

主任技術者・監理技術者の配置義務違反

一定規模以上の建設工事において、必要な主任技術者または監理技術者を配置しなかった。
(建設業法第26条)

見積条件の提示

元請負人が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により下請負人に見積りを行わせた。

元請負人が、出来るだけ早くなど曖昧な見積期間を設定したり、見積期間を設定せずに、下請負人に見積りを行わせた。

独占禁止法・下請法違反の事例

入札談合の禁止、独占禁止法違反、公正な競争の確保が目的です。

下請代金の適正な支払い、遅延や未払いは禁止、不当な減額や追加工事の押し付けも禁止。

入札談合

他の建設業者と事前に協議し、落札者を決定するなどの不正な行為を行った。(独占禁止法第3条)

不当な廉価買い叩き

下請業者に対して、通常よりも著しく低い価格で工事を請け負わせた。(下請法第4条)

支払遅延

下請業者への代金支払いを、正当な理由なく遅延させた。(下請法第4条第1項第4号)

下請代金の支払い遅延・未払い(建設業法第24条)

下請代金の減額

下請業者に責任のない理由で、合意した下請代金を一方的に減額した。(下請法第4条)

労働基準法・労働安全衛生法違反の事例

偽装請負は禁止、実際は労働者派遣なのに請負契約を装うのは違反です。労働者の社会保険加入は必ず必要、建設現場での安全対策の強化、ヘルメット・安全帯の使用義務なども。

違法な長時間労働

法定労働時間を超えて労働させ、かつ割増賃金を支払わなかった。(労働基準法第32条、第37条)

安全帯の不使用

高所作業において、労働者に安全帯を使用させなかった。(労働安全衛生法第20条)

健康診断の未実施

労働者の定期健康診断を実施しなかった。(労働安全衛生法第66条)

労働災害の報告義務違反

労働災害で所轄労働基準監督署長に報告しなかった。(労働安全衛生法第101条)

その他の違反事例

産業廃棄物の不法投棄

建設工事の産業廃棄物を、許可のない場所に投棄した。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条)

騒音規制基準の超過

工事現場の騒音が、法令で定められた基準を超過した。(騒音規制法)