下請けだからといって建設業許可が不要になることはありません。元請業者だけでなく、下請業者、さらには二次下請、三次下請といった場合にも、一定の工事を施工するには建設業許可が必要になります。元請けが許可を持っていれば、下請けは不要というわけではありません。
建設業許可とは
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に必要となる国、または都道府県知事からの許可です。根拠法令は「建設業法」になります。
建設業法第3条によって、元請けか下請けかを問わず、1件の請負代金が税込500万円(建築一式工事は1500万円)以上の工事を請け負う場合には、建設業の許可を受けなければなりません。
これを「一般建設業許可」と言います。さらに、下請けに工事を出す立場にあり、一定金額以上の下請け契約を締結する場合には「特定建設業許可」が必要になります。
特定建設業許可とは、発注者から直接請け負った工事について、下請け業者に発注する合計金額が4500万円(建築一式工事の場合は7000万円)以上の場合に取得が義務付けられる許可です。これは、大規模な工事を下請けに出す場合に、下請け業者の保護や工事の品質確保を目的とする制度です。
これらの金額に満たない軽微な建設工事のみを請け負う場合は、必ずしも建設業許可は必要ありませんが、公共工事を直接請け負うためには、金額に関わらず建設業許可が必要となります(建設業法第7条)。
建設業法を引用しておきます。
建設業許可(建設業法第3条)
ア 建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業法第3条の規定に基づき、建設業の許可を受けなければなりません。
イ 「軽微な建設工事」とは、工事1件の請負代金の額が建築一式工事以外の建設工事の場合にあっては、500万円未満、建築一式工事にあっては1500万円未満又は延べ面積が2500平方メートル未満の木造住宅の工事をいいます。

下請けの場合の建設業許可
よく誤解されることがありますが、下請けや二次、三次下請けであっても、請負金額が500万円(税込)以上になる場合には、建設業の許可が必要です。
たとえば、元請けから下請けに1000万円の電気工事が発注された場合、下請け業者が電気工事業の許可を持っていなければ、その契約は建設業法違反になります。
同じく、その下請けがさらに、二次下請けに500万円以上の工事を発注する場合も、二次下請け業者が建設業許可を持っていなければなりません。
建設業法では、元請や下請の区別は関係なく「請負契約を締結して建設工事を施工する者」が対象となるため、工事の金額が基準(500万円)以上であれば、2次とか3次に関係なく許可が必要になります。(建設業法第3条、第15条など)
建設業法(建設業許可)の目的は、建設工事の品質確保と、下請事業者の保護にあります。建設業許可を受けた事業者は、一定の技術力や経営能力を有していると認められるため、適切な施工が期待できます。
また、許可制度を通じて、建設業法や関連法規の遵守が促され、下請事業者が不当な扱いを受けることを防ぐ役割も果たします。
下請けの場合の罰則
元請け下請けに関係なく、建設業許可を受けずに基準金額以上の工事を請け負った場合、無許可営業となって、建設業法第47条第1号により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科されることがあります。
さらに、法人が違反した場合は、法人自体にも両罰規定(同条第2項)が適用されて、代表者などだけでなく、法人にも罰金刑が科されることになります。
また、違反者は将来的に建設業許可の取得や更新において不利益(欠格要件)を受ける可能性があります。

建設業許可取得の要件
建設業許可を取得するためには、次のような要件をすべて満たす必要があります。(建設業法第7条、同第15条など)
一般建設業の主要な要件
経営業務の管理責任者(経管)を配置していること(所属していること)
経営業務の管理責任者とは、建設業の許可を取得する際に、事業の経営に関する責任を負う者のことです。建設業に関して一定の経験を有する役員や個人事業主ということになります。
営業所技術者(旧・専任技術者)が営業所にいること
施工管理技士などの該当工事に関する資格や実務経験が必要になります。専任技術者は2024年12月に名称が営業所技術者となりました。
財産的基礎・金銭的信用があること
自己資本が500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があること
誠実性があること
不正または不誠実な行為を行うおそれがないこと
欠格要件に該当しないこと
破産者(復権していない者)、暴力団関係者などでないこと