建設業で営業する場合「建設業許可」の取得が必要になってきます。建設業許可がないと、一定規模以上の工事を行うことはできませんが、建設業許可には「知事許可」と「大臣許可」の2種類があることをご存知でしょうか?「知事許可」と「大臣許可」について、わかりやく、詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業許可は、建設工事の適正な施工を確保して、発注者の保護を図ることを目的として、建設業法に基づいて義務付けられている許可制度です。
建設業において、原則として建設業許可が必要になります。これは、請負金額が税込みで500万円以上、建築一式工事の場合は1500万円以上または延べ面積150平方メートル以上の木造住宅の工事を行う場合に、国または都道府県から取得しなければならない許可のことです。
建築一式工事とは、建築物を建設する工事で、総合的な企画、指導、調整のもとで行われる工事のことです。元請業者として、大工工事、内装工事、電気工事など、さまざまな専門工事をまとめた上で、建築物の完成を担う工事のことです。例えば、住宅の新築やリフォーム、建物の改修などがこれにあたります。
木造住宅の例外としては、延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事については、たとえ、1500万円以上の工事でも、建築一式工事の許可は不要になります。
この許可は、建設業法(昭和24年法律第100号)に基づいて、建設業者の適正な運営と工事の品質確保を目的としています。
建設業許可は業種ごと(全29業種)に必要となっており、さらに一般建設業許可と特定建設業許可に区分されています。そして、この許可の所管行政庁により「知事許可」と「大臣許可」に分かれます。
建設業許可(建設業法第3条)
1 建設業の許可
ア 建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業法第3条の規定に基づき、建設業の許可を受けなければなりません。
イ 「軽微な建設工事」とは、工事1件の請負代金の額が建築一式工事以外の建設工事の場合にあっては、500万円未満、建築一式工事にあっては 1,500万円未満又は延べ面積が 平方メートル未満の木造住宅の工事をいいます。
許可を取得することで、社会的な信用を得られ、より大規模な工事の受注や金融機関からの融資などが受けやすくなるというメリットがあります。
建設業の許可業種29建設業の許可は、下記の の業種ごとに行われ、営業する業種ごとに取得する必要があります。
また、同時に2つ以上の業種の許可を受けることができ、現有の許可業種に業種を追加することもできます。
ある業種の許可を受けた場合でも、他の業種の工事を請け負うことは、その業種の許可も受けていない限り禁じられます。
土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロツク工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業
引用元(国土交通省):https://www.mlit.go.jp/onestop/137/images/137-001.pdf

知事許可とは
知事許可とは、営業所が1つの都道府県内にしか存在しない建設業者が対象となる許可です。許可の申請先は、その営業所の所在地を管轄する都道府県知事になります。
たとえば、広島県内に本店(主たる営業所)と支店(従たる営業所)がある場合であっても、両方ともが広島県内であれば「広島県知事許可」となります。
- 知事許可の特徴は次のとおりです。
- 管轄は都道府県
- 審査は都道府県の建設業課等で行われる
- 審査期間が比較的短い
- 地域密着の中小業者が多い
申請先は、営業所を置く都道府県の建設業担当部署(例:都道府県庁の建設業課など)です。許可の要件(経営業務の管理責任者、専任技術者、財産的基礎など)は大臣許可と共通ですが、申請書や添付書類は各都道府県で若干異なる場合がありますので注意が必要です。
大臣許可とは
大臣許可とは、2つ以上の都道府県に営業所を設けている建設業者が対象の許可です。許可の申請先は国土交通大臣で、実際の受付や審査は地方整備局(または地方整備局の出先機関)で行われます。
たとえば、本店が大阪府、支店が広島県にあるような場合は「国土交通大臣許可」が必要になります。
- 大臣許可の特徴は次のとおりです。
- 管轄は国土交通省
- 複数都道府県に営業所を置く中堅~大手企業が多い
- 知事許可に比べて審査が厳格になる傾向がある
- 許可通知までの期間がやや長い
許可行政庁(大臣許可と知事許可)(建設業法第3条)
ア 建設業を営もうとする者が、2つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合は国土交通大臣の許可が、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合は都道府県知事の許可が必要となります。
イ 営業所とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約の見積、入札、契約の締結を行う事務所等、建設業に係る営業に実質的に関与するものをいいます。
ウ 大臣許可、知事許可を問わず、営業の区域又は建設工事を施工する区域についての制限等はありません。
引用元(国土交通省):https://www.mlit.go.jp/onestop/137/images/137-001.pdf
申請先は、主たる営業所(本社など)を管轄する地方整備局(国土交通省の地方支分部局)です。大臣許可を取得すれば、全国どの都道府県に営業所を設置しても、その許可で建設業を営むことができます。

知事許可と大臣許可の違い
知事許可と大臣許可の違いを一覧表にしました。
比較項目 | 知事許可 | 大臣許可 |
---|---|---|
営業所の所在 | 1都道府県内のみ(1つの都道府県内のみ) | 複数の都道府県に所在2つ以上の都道府県にまたがる |
許可権者 | 都道府県知事 | 国土交通大臣 |
審査窓口 | 各都道府県庁の建設業担当部署 | 主たる営業所を管轄する地方整備局 |
主な対象 | 地域密着型の中小企業 | 広域展開する企業 |
審査の期間 | 比較的短い | やや長い傾向あり |
審査の厳格さ | 地方行政による判断 | より形式的かつ厳格 |
有効範囲 | 許可を受けた都道府県内のみ | 全国どこでも |
メリット | 申請手続きが比較的簡素(都道府県による) | 全国展開が可能、社会的信用が高い |
デメリット | 営業所を他県に設ける場合、改めて大臣許可が必要 | 申請手続きが煩雑、審査期間が長い傾向がある |
両者の違いは「営業所の所在」によって決まるところが重要です。工事の場所(都道府県)ではなく、営業所がどこにあるかが判断基準となります。営業所が2つ以上の都道府県にまたがる場合は、大臣許可が必要になると思って頂いて問題ありません。
なお、建設業許可の要件としては、知事許可と大臣許可において許可の要件(経営業務の管理責任者、専任技術者、財産的基礎など)には大きな違いはありません。
また、許可の有効期間としては、どちらの許可も有効期間は5年間で、更新手続きが必要になります。
知事許可から大臣許可への変更
会社が事業拡大して、他の都道府県に新たな営業所を設置する場合は、「知事許可」から「大臣許可」へ変更する必要があります。単なる住所変更だけではなく、新たに大臣許可を取得し直す手続きが必要になります。
たとえば、「最初は1つの都道府県で事業を拡大していき、いずれは全国展開を目指したい」という場合が多いですが、ほかの都道府県に進出した場合は、知事許可から大臣許可へ切り替える必要が出てきます。
主な手続き
業種ごとに大臣許可の新規申請を行います。主たる営業所を管轄する地方整備局に対し、大臣許可の申請を行います。大臣許可が下りた後、知事許可を廃業届により抹消します。
注意点
許可番号は新しくなってしまいます。変更のタイミングによって、工事受注に影響する恐れがあるため注意が必要です。同時に複数業種を取得している場合はすべて大臣許可で再取得する必要があります。
大臣許可から知事許可への変更
本店以外の他の都道府県の営業所を閉鎖して、本店のある1つの都道府県のみで営業を行うようになった場合は、「大臣許可」から「知事許可」への変更ができます。これも手続き上は知事許可の新規取得となります。
事業規模を縮小したり、特定の都道府県に事業を集中させたりする場合など、大臣許可から知事許可への変更を検討することになります。
主な手続き
1.閉鎖した営業所の廃止届を提出します。
2.知事許可の新規申請を行います。当該都道府県知事に対し、知事許可の申請を行います。最寄りの都道府県庁で手続きをします。
3.大臣許可の廃業届を提出します。
注意点
これも許可番号が変わります。一定期間、大臣許可から知事許可への許可証の「空白」が生じないよう、事前の段取りが必要になります。