施工管理技士と営業所技術者(旧・専任技術者)の法改正について詳しく解説

コラム

建設業許可の要件として重要な「施工管理技士」と「営業所技術者(旧・専任技術者)」の制度については、近年の法改正によって大きな変更がありましたので詳しく解説します。

施工管理技士とは

施工管理技士とは、建設工事において品質・工程・安全・原価等を管理して、適正に施工が行われるよう監督・指導を行う技術者のことです。国家資格であり、「施工管理技士法」に基づいて定められています。施工管理技士法とは、建設業法に定められた国家資格である「施工管理技士」の資格取得に関する法規です。

建設業法第26条第1項
(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

この主任技術者として配置される技術者の一部が、施工管理技士の資格を持つ者となります。特に、特定建設業者が元請として請け負った建設工事において、下請契約の総額が一定額以上となる場合は、主任技術者に代えて「監理技術者」の配置が義務付けられており、この監理技術者となるためには、施工管理技士等の国家資格が原則として必要となります。

施工管理技士には「1級」と「2級」があり、それぞれに応じて管理できる工事の規模や種類が異なります。

施工管理技士は次のように区分されます。

1級施工管理技士

大規模な公共工事や特定建設業の専任技術者に就くことが可能です。

2級施工管理技士

建設現場において、中小規模の建築工事の施工計画作成、工程管理、安全管理、品質管理などを行うために必要な国家資格です。この資格を取得することで、一般建設業の許可を受けている建設業者の営業所や工事現場で、主任技術者として働くことができます。

営業所技術者とは(旧・専任技術者)

営業所技術者とは、建設業法に基づいて建設業者が営業所ごとに置かなければならない技術者のことです。

以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、法改正により2025年12月に「営業所技術者」と名称が変更されました。

営業所技術者の役割

建設業者が受注しようとする工事に関して適切な技術的助言を行います。
工事の実績確認や法令遵守のための体制整備に関与します。

営業所技術者は、適正な請負契約が締結されるように技術的観点から契約内容の確認を行うほか、請負契約の適正な履行が確保されるように現場の監理技術者等のバックアップやサポートを行います。

建設業法において「営業所」とは本店、または支店、もしくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所のことで、営業所技術者はその営業所に常勤して、専らその職務に従事すること(専任)が必要となっています。

営業所技術者の要件

  • 営業所技術者の主な要件の例として次のものがあります。
    • 指定学科の卒業と一定の実務経験(大学卒なら3年、高卒なら5年など)
    • 実務経験のみで10年(無資格)
    • 技術検定2級以上など(業種による)

許可を受けようとする業種ごとに、必要な資格や経験年数が異なります。「営業所」に専任されている必要があるため、他の営業所や工事現場との兼務は原則できません

建設業法(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。

最近の法改正の経緯

建設業界は人材不足や技術者の高齢化が深刻化がすすんでおり、若手技術者の育成と事業承継を目的とした制度改革が必要になってきています。

2023年(令和5年)に公布された「建設業法等の一部を改正する法律」によって次のような変更が行われました。

働き方改革への対応(週休二日制の推進など)
技術者制度の柔軟化(兼務の緩和やリモート対応の容認)
資格制度の一元化・簡素化

法改正の内容

「専任技術者」から「営業所技術者」へ名称変更

「専任技術者」は、「営業所技術者」に改められました。これによって業務実態を反映した名称となりました。

複数営業所間での兼任要件の緩和

これまで1人の技術者が複数の営業所を兼任することはできませんでしたが、ICT(情報通信技術)を活用した管理体制の整備を前提として、兼任が可能になりました。

施工管理技士制度の変更

法改正により、施工管理技士の資格制度が見直されました。

技術検定の再編

従来の技術検定は、1級と2級の区分でしたが、法改正によって「技士補」と「技士」も加わり再編されました。

1級第一次検定合格者(技士補)

1級の第一次検定に合格した者は「技士補」となって主任技術者として現場に配置できるようになりました。これによって、若手技術者であっても早い段階から現場経験を積むことが可能となり、技術者育成の促進が期待されています。

つまり、1級第一次検定の合格で「技士補」の称号を取得できます。1級技士補は、主任技術者の資格(2級施工管理技士など)を有することで、監理技術者の補佐となることができます。そして一定条件を満たした2つの現場を特例監理技術者が兼任することができるようになります。

1級第二次検定合格者(技士)

1級の第二次検定に合格した者は、引き続き「技士」となり、監理技術者として配置できる資格を有することになります。

2級合格者(技士)

2級の技術検定に合格した者も「技士」となり、2級施工管理技士の資格を持つことになります。

建築施工管理技術検定の1級と2級の違い

・1級を取得すると監理技術者として認められます。
・1級の第一次検定は19歳以上であれば誰でも受験可能になります。
・2級を取得すると主任技術者として認められます。
・2級の第一次検定は17歳以上であれば誰でも受験可能になります。