税務調査で税理士の立ち合いは必要かと聞かれることがあります。たしかに法的に「必須」ではありませんが、可能な限り税理士に立ち合い、税務代理してもらうほうがよいでしょう。
理由は手間とリスクの軽減、調査官とのやり取りでのミスを回避することと交渉による負担軽減が期待できるためです。
費用はかかりますが、税務調査に慣れた税理士に立ち合いを依頼することで、負担軽減だけでなく「不必要な追加課税や誤解の回避」「調査の円滑化」が期待できます。
特に帳簿や取引が複雑な事業者ほど、税理士の立ち合いが有利に働く可能性が高いです。

税理士の立ち合いで、できることとできないこと
税理士(税務代理人)は、納税者に代わって調査官に対して主張や陳述(交渉・回答)を行うことができます(税務代理)。税理士法や国税の運用指針でも税務代理が明確になっています。
一方で、税理士資格のない第三者(家族・記帳代行者など)は「同席」できても、税務代理人のように調査官に対して主張・交渉する権限は原則ありません。
税理士立ち合いのメリット
税理士が立ち会うことによって実務的に有利になりやすい理由です。
精神的・事務的負担が減る
調査当日は税務署からの細かい質問や指摘があることがあります。税理士が対応することで経営者や事業主の心理的負担が軽くなって業務の中断も最小限にできます。
税務署の調査官から矢継ぎ早に質問をされたり、膨大な資料の提出を求められたりすると、冷静な判断が難しくなることも少なくありません。税理士が立ち会うことで、調査官とのやり取りをすべて任せることができて、納税者ご自身は質問に答えるだけで済むため、精神的な負担が格段に軽減されます。
専門的な視点でその場で適切に説明や反論ができる
帳簿や処理の妥当性、取引の性質などについて税法に基づいて説明や交渉することで、不必要な追徴金や過大な指摘を避けられる可能性があります。
税務調査では、日頃の経理処理や税法上の解釈について、専門的な視点からの質問が投げかけられます。税理士は税法の専門家であり、調査官の質問の意図を正確に理解して適切な回答をすることができます。これにより、誤解による不要な指摘を避けたり、納税者にとって不利になるような発言をしてしまうリスクを回避することができます。
税務調査官は、納税者の申告内容に誤りがないかを確認することが主な目的です。しかし、中には強引な指摘や、納税者に不利な解釈を主張してくる調査官もいるかもしれません。税理士が立ち会うことで、調査官の主張に対して法的な根拠に基づいた反論を行って納税者の正当な権利を守ることができます。また、調査官との交渉において、互いの主張を整理し、円満な解決を図ることができます。
事前準備と対策の立案ができる
税理士が事前に書類をチェックして、説明が必要な箇所、裏付け資料を準備すべき場合など、対策を立てられるので調査を有利にすすめやすくなります。
調査期間の短縮につながる可能性
税理士は、調査官が必要とする資料や情報を迅速かつ的確に提供することができます。これにより、調査がスムーズに進み、結果として調査期間が短縮されることも期待できます。
追徴課税を最小限に抑えられる可能性
調査官から指摘された事項について、税理士が過去の判例や通達などを根拠に反論することで、最終的な追徴税額を最小限に抑えられる可能性があります。
調査後の手続をしてもらえる
修正申告・更正への対応・不服申立ての手続きをしてもらったり、手続きの窓口になってくれます。
調査結果に基づく修正申告や税務署との折衝、場合によっては不服申立てまでも対応してもらえることがあります。
費用がかかっても、このように調査官と自分だけ(本人だけ)でやるより、税理士が立ち合ったほうが有利になるすすめることができます。

「専属税理士がいない」個人事業主の場合はどうするか?
専属・常時顧問がいない個人事業主は多いようですが、次のような選択肢があります。
スポット(単発)で立会いを依頼
調査の連絡が来たら、近隣の税理士事務所や「立会い対応可」としている事務所に単発で依頼もできるようです。
税務代理権限証書
税理士または税理士法人が、税務代理をする場合に、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出する手続があります。
税務代理権限証書とは、税理士が納税者に代わって税務代理を行う場合に、税務署に対して提出すべき書類です。 税務代理とは、納税者から依頼を受け、官公署に対する税務に関する手続きを代理や代行することをいいます。
できるだけ事前に「税務代理権限証書」を準備しておきます。すでに税理士に立ち合ってもらう予定があるなら、税務代理権限証書を税務署に提出しておくことで、税務署と税理士の連絡がスムーズになります。
税理士法第30条では、税理士が税務代理を行う場合に、その権限があることを証明する書面(=税務代理権限証書)を提出しなければならないと定められています。
(税務代理の権限の明示)
第30条 税理士は、税務代理をする場合においては、財務省令で定めるところにより、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない。
実務的な流れ
税理士が受任して立会いして、その後の事後処理をしてもらいます。
調査通知が来たら、まず、すること
顧問税理士がいる場合であれば、速やかに税理士に連絡して税務代理権限証書の有無や調査対象の範囲を確認します。
顧問がいない場合であれば、スポット受任の可能な税理士を探したり、立会い実績のある事務所に連絡します。
税理士と事前準備
対象期間の試算表・総勘定元帳・仕訳帳・請求書・領収書・契約書・通帳コピー・給与台帳など、調査で見られそうな証憑を準備します。税理士が事前チェックして補足資料を指示します。
調査当日
税理士は税務署側とのやりとりを主に対応します。当事者である納税者は必要に応じて説明補助者となり、調査官の指摘点は税理士と整理してその場で説明・交渉するか、後日回答するかを決めます。
調査後の対応
修正申告、過少申告加算税や延滞税の検討、必要なら不服申立て(審査請求)など税理士が代行します。



