税務調査の事前通知について、書面ではなく電話で取引先へも通知

コラム

税務調査の事前通知は、納税者の権利を守る手続です。通知を受けたら、早めに顧問税理士に連絡して、日程調整・資料準備・対応方針を相談しておきます。

税務調査事前通知の法令根拠

税務調査の事前通知の根拠は、国税通則法第74条の9になります。

この条文では、税務職員が納税者の事業所や自宅などに立ち入って行う実地調査(任意調査)を行う場合、原則として、あらかじめ日時・場所・目的・対象税目などを通知しなければならないと定められています。

運用については国税通則法基本通達(74条の9関係)で示されており、調査対象者に不意打ちとならないよう、事前に準備の機会を与えるとあります。

実地の調査では必ず事前通知がもらえるか?

実地の任意調査では事前通知が行われますが、例外として次の場合は通知なしで行われることがあります(国税通則法第74条の9第2項)。

  • 税務調査で事前通知がない場合は次のとおりです。
    • 証拠隠滅のおそれがある場合
    • 事前通知により調査の目的が達成できなくなるおそれがある場合
    • 脱税などの悪質な事案で、強制調査(査察)に準ずる場合

このような場合は、抜き打ち調査として実施されることもありますが、通常の法人・個人事業者であれば、事前通知が行われます

事前通知は何日前に?

法令上、何日前までにと具体的な日数の規定はありませんが、1週間前程度に電話連絡で通知されることが多いです。

国税庁の通達でも「納税者が準備するために相当の期間を置いて通知することが望ましい」とされており、急な翌日通知などはまれです。

事前通知は書面でもらえるか?

通常は電話または口頭で通知されます。

  • 事前通知は、調査官からは次の内容が伝えられます。
    • 調査日・時間
    • 調査場所
    • 対象税目・期間
    • 来訪する調査官の氏名・所属
    • 調査の目的や概要

なお、電話による事前通知が困難と認められる場合は、税務当局の判断で書面によって事前通知を行う場合もありますが、納税者の要望で事前通知内容を記載した書面を交付することはありません

事前通知のない調査は違法ですか?

事前通知なしの調査でも、違法とは限りません。国税通則法74条の9第2項の例外事由に該当すれば、通知なしの調査が認められています。

ただし、調査官の都合などによる無通知は許されず、正当な理由がなければ税務職員側が手続違反となることもあります。

事前通知の時点で調査を拒否できるか?

税務調査は任意調査なので法的には調査の立入を拒否する自由はありますが、正当な理由のない拒否や妨害は、国税通則法第128条により処罰の対象となることがあります。

合理的な理由があれば問題ありませんが、単に受けたくないという理由で拒否することはできません

事前通知を顧問税理士に出せるか?

納税者が顧問税理士を代理人として届出している場合には、調査通知は顧問税理士宛てに行われます。

「税理士法第30条(代理権の範囲)」および「国税通則法第75条」に基づく慣行で、顧問税理士を通してやり取りを行うのが一般的です。

事前通知の日時は変更できるか?

通知を受けた後、正当な理由(出張・会議・決算作業中など)があれば、日程変更の申し出ができます

調査官も無理に強行することはせず、両方の都合を調整して再設定します。

事前通知の場所は変更できるか?

原則は事業所・店舗などの現場で行われますが、税務署や税理士事務所などの場所で行うこともできます。帳簿や領収書が顧問税理士の事務所にある場合、税理士事務所での実施を依頼することがよくあります

事前通知で調査の理由や根拠は説明されるのか?

通知時には、調査の目的・対象税目・対象期間などの概要が伝えられますが、「どのような情報から調査対象となったか」や「通報・情報提供があったか」といった具体的な調査理由までは通常説明されません。

納税者は、なぜ調査が入るのかを知る権利がありますが、調査の公正を確保するため、税務署は詳細を明らかにしないのが実態です。

法令上、実地の調査を行う理由については、法令上事前通知すべき事項とはされていませんので、説明されません。

取引先等への調査で事前通知はありますか?

取引先・関係先への調査(反面調査)は、事前通知は原則ありません。反面調査は、税務署が事実関係を確認するために行うもので、調査先が納税者本人ではないため、通知義務の対象外です。

反面調査とは、税務調査対象者本人ではなく、その取引先などの関係先に対して実施される税務調査のことを指します。

ただし、本人調査の過程で「取引先にも照会する可能性があります」と説明される場合もあります。

一般的には、反面調査の場合には、事前通知に関する法令上の規定はありませんが、運用上、原則として、あらかじめその対象者の方へ連絡を行うようにされています。

調査は事前通知の内容の範囲内ですか?

原則として、通知された税目・期間の範囲内で実施されますが、調査の過程で他税目や別期間に明らかな誤りが見つかった場合、調査範囲を拡大することも可能です(国税通則法第74条の2)。その場合は、改めて追加通知や説明を行うのが一般的です。