経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者(営技)の実務経験証明書は建設業許可の申請においてはキーになる書類です。広島県の要件緩和の事例も含めてわかりやすく詳しく解説します。
建設業許可の審査では、経管と営技の経験を正確に証明できるかが重要です。単に形式的な証明書だけでなく、実態のある資料で裏付けることが求められます。実務経験証明書は、過去の勤務先に証明を依頼する必要があるために手配に時間を要するので早めの準備しておきます。
建設業許可とは
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負うために必要な国または都道府県の許可制度です。
建設業法第3条により、500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上または延べ面積150平方メートルを超え)の工事を請け負う場合には、建設業許可が必要となります。
この許可を取得するためには、経営業務の管理責任者、営業所ごとの営業所技術者、誠実性、財産的基礎など許可要件を満たさなければなりません。「経営業務の管理責任者」と「営業所技術者(旧専任技術者)」は人的要件として重要な要件となります。

経営業務の管理責任者とは
経営業務の管理責任者(経管)とは、建設業の経営業務を総合的に管理し、経営の実務経験を有する者を指します。建設業の経営を適切に行う能力を有する者のことです。
建設業の経営は、他の事業とは異なり、工事の請負や施工管理など特殊なノウハウが必要とされるため、適切な経営体制が構築されていることを確認するために、この要件が設けられています。
- 建設業法施行規則第7条第1号では、次のいずれかの立場での経験が必要とされています。
- 建設業を営む法人の役員として5年以上の経営業務の管理経験
- 個人事業主として5年以上の経営業務の管理経験
- これらに準ずる立場(支配人、支店長など)での経験が5年以上ある者
経管になれるのは、常勤であること、そして営業所において専ら経営業務に従事している者でなければなりません。
また、令和2年10月の法改正により、以前のように「経営業務の管理責任者」という独立した役職要件ではなく、常勤役員等が経営業務管理の適正な経験を有することが求められる形に変更されていますが、実質的には「経営業務の管理責任者」としての要件確認は依然として審査上重要です。

営業所技術者とは
営業所技術者とは、建設業の営業所ごとに専任で配置しなければならない技術上の責任者のことです。
建設業法第7条第2号及び同法施行規則第7条第2号に基づき、営業所技術者には次の2区分があります。
一般建設業の営業所技術者
- 一般建設業の営技の要件は次のとおりです。
- 実務経験10年以上
- または国家資格(2級施工管理技士、建築士など)を有する者
特定建設業の営業所技術者(旧専任技術者)
- 特定建設業の営技の要件は次のとおりです。
- 実務経験15年以上
- または国家資格(1級施工管理技士、一級建築士など)を有する者
特定建設業の許可を受ける場合は、上記の要件に加え、「指導監督的な実務経験」など、さらに厳しい要件が課せられます。
この営業所技術者は、建設工事の技術的内容を把握し、施工体制や品質確保のための重要な役割を担います。
経営業務の管理責任者の実務経験証明書
経営業務の管理責任者として認められるには、建設業の経営に関する経験を証明する書類が必要です。
この証明書は、単なる勤務証明ではなく、実際に経営業務を統括や管理をしていたことを裏付けるものでなければなりません。
主な証明方法
- 経管の主な実務経験証明書は次のとおりです。
- 経営業務の管理責任者 実務経験証明書(様式第七号)
- 法人登記簿謄本(役員期間の確認用)
- 会社案内・組織図(役職・業務内容の説明用)
- 請負契約書、注文書、請求書等(経営実態を示す資料)
- 税務署の開業届・確定申告書控(個人事業主の場合)
なお、経管の経営業務の管理とは現場監督や営業職を指すものではなく、経営全般の決定権を持ち、財務・契約・人事などを管理していたことが求められます。
在職証明書のみでは不十分であり、取引実績や税務書類などの裏付け書類が求められることがあります。
経験期間は満5年以上(または該当期間の合算5年以上)である必要があります。
営業所技術者の実務経験証明書
営業所技術者が資格でなく「実務経験」で認められる場合は、技術的業務に従事していた証拠書類を提出する必要があります。
この場合も、「実務経験証明書(様式第八号)」を作成し、勤務先の代表者や元請事業者に証明をもらいます。
主な証明方法
- 営業所技術者の主な実務経験証明書は次のとおりです。
- 営業所技術者 実務経験証明書(様式第八号)
- 工事請負契約書、注文書、請求書、工事写真、施工日報など
- 社会保険加入記録や給与明細(従事期間の裏付け)
実務経験とは
「実務経験」とは、建設工事の施工や管理に従事した経験を指しており、現場での作業員としての単純労務ではなく、施工技術や品質管理に関する経験であることが求められます。
実務経験は、原則として満10年以上(特定建設業は15年以上)必要です。
また、休業期間や他業種勤務期間は通算できません。経験内容は、具体的な工事名・発注者名・工期・担当業務内容まで詳細に記載することが重要です。
営業所技術者等の実務経験の要件緩和
広島県の手引きでは要件緩和の説明があります。
建設業許可に伴う営業所技術者等の実務経験については、許可を受けようとする業種と技術的に共通性があれば、他業種の実務経験であっても、次の場合に限っては、許可を受けようとする業種の実務経験として認められます。
次の業種については、10年の実務経験に加え、次の場合も営業所技術者等として認められます。 とび・土工工事、しゅんせつ工事、水道施設工事、 大工工事 、屋根工事 、 内装仕上工事、ガラス工事 、防水工事 、熱絶縁工事 、解体工事
詳しくは、下記の広島県の建設業許可申請の手引きをご覧になってください。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/606782.pdf



