経営業務管理責任者、営業所技術者(旧専任技術者)と令3条の使用人について

コラム

建設業許可制度において、建設業者が満たすべき人的要件の代表例として「経営業務の管理責任者(経管)」と「営業所技術者(旧・専任技術者)」、そして「令3条の使用人」があります。

これらの役職は、それぞれ異なる役割を担っており、重複する部分や制限される兼務の関係性もありますので、それぞれを詳しく解説します。

経営業務の管理責任者(経管)とは

経営業務の管理責任者とは、建設業の経営に関する実質的な責任を担う者であり、建設業許可要件の一つです。

建設業の許可を受けるには、法人では役員のうち1人、個人事業主であれば、本人または支配人などが、次のいずれかの経営経験を有している必要があります。

建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること

法人の役員、個人の事業主、支配人、支店長などの地位にあって、建設業の経営業務を総合的に管理した経験を指します。

建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者であること。

建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。

例えば、取締役会設置会社の取締役で、経営業務の執行に関する決議に関与していた者などの場合です。

「経営業務」とは、受注、予算、資金、人事、労務管理など、経営全般に関する業務であり、単なる建設工事の現場経験だけでは経管にはなれません。

経管の設置は許可要件のため、許可を取得した後で経管が退職して、後任が不在となった場合は、要件欠如で許可の取消し(建設業法第29条第1項第1号)となりますので、このような不在期間が生じないよう、あらかじめ上記要件を満たす者を選任するなど、事前に準備しておくことが必要になります。

また、経管は常勤であることが義務付けられています。他の会社の役員を兼任していたり、他の事業に従事していたりする場合など、常勤性を証明できないケースでは、経管として認められないこともあります。

営業所技術者(旧専任技術者)とは

営業所技術者とは、建設業の各業種について技術的な責任を持つ者であり建設業許可の要件です。

専任技術者という名称は、2024年12月に法令で営業所技術者に変わりました。

  • 営業所技術者の主な要件の例として次のものがあります。
    • 指定学科の卒業と一定の実務経験(大学卒なら3年、高卒なら5年など)
    • 実務経験のみで10年(無資格)
    • 技術検定2級以上など(業種による)

許可を受けようとする業種ごとに、必要な資格や経験年数が異なります。「営業所」に専任されている必要があるため、他の営業所や工事現場との兼務は原則できません。

(国交省ホームページより)

一般建設業の許可を受けようとする場合

[1]-1指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者

[1]-2指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称するもの

令3条の使用人とは

「令3条の使用人」とは、建設業法施行令第3条に定められた「支店長・営業所長など」のことを指します。実務上は「支配人」「支店長」「営業所長」など、法人が法人格を代表する本社以外の拠点で事業を行うための責任者となります。

具体的には、支店長や営業所長など、当該支店または営業所の契約締結権限を有し、その運営を実質的に担当する者のことです。令3条の使用人は、単なる名義貸しではなく、その支店または営業所において、建設工事の契約締結や現場の管理など、実質的な業務を統括する立場であることが求められます。

建設業法施行令
(使用人)
第三条 法第六条第一項第四号(法第十七条において準用する場合を含む。)、法第七条第三号、法第八条第四号、第十二号及び第十三号(これらの規定を法第十七条において準用する場合を含む。)、法第二十八条第一項第三号並びに法第二十九条の四の政令で定める使用人は、支配人及び支店又は第一条に規定する営業所の代表者(支配人である者を除く。)であるものとする。

法人の「役員」に準ずる立場とみなされており、経管などの要件を代替できる者とされています。

令3条の使用人は経管になれるの?

令3条の使用人であっても、経営業務の実績が認められれば、経営業務の管理責任者としての要件を満たすこともできます

ただし、令3条の使用人が経管の要件を満たしている必要があります。上記「経営業務の管理責任者(経管)とは」の要件を満たしていなければなりません。

支店長や営業所長として5年以上にわたり実質的な経営業務である受注・資金繰り・人事労務などを担っていたことが、職務権限書や社内証明などで確認できれば、経管として認められることがあります。

令3条の使用人は営業所技術者と兼務できるの?

令3条の使用人と営業所技術者との兼務は上記の営業所技術者の要件を満たしていれば、兼務できますが、特に次のような条件を満たす必要があります。

当該の営業所に常勤しており、業務を円滑に遂行できる体制が整っていること
兼務によってどちらかの職務に支障が出ないことが明らかであること

複数の営業所を管理している令3条の使用人である場合では、「専任性」に問題が生じ、営業所技術者として認められない可能性もあります。

常勤性・専任性を証明する書類(就業規則、勤務表、給与明細など)が必要になることがあります。