経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者及び主任技術者と監理技術者の兼任について詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業を行う場合、一定規模以上の工事を請け負う場合には「建設業許可」が必要になります。
具体的には、1件の工事請負代金が500万円(建築一式工事は1500万円)以上の工事を請け負う場合には、国または都道府県知事から建設業の許可を受けなければなりません。なお、この金額は税込みです。
建設業許可には、29業種の区分、たとえば土木工事業、電気工事業、内装仕上工事業などがあって、それぞれの業種ごとに「一般建設業」と「特定建設業」の区別があります。許可を取得するには、経営業務の管理責任者や営業所技術者(旧・専任技術者)など、建設業法などの法定の人的要件を満たす必要があります。

経営業務の管理責任者とは
経営業務の管理責任者(経管)とは、許可を受けようとする建設業者において、経営業務を総合的に管理・執行できる能力を有する者のことです。
かつては「経営業務の管理責任者(経管)」という明確な立場の者を常勤で置く必要がありましたが、2020年の法改正によって、現在では経営業務管理責任要件となっており、「経験や補佐体制により適正な経営が可能であること」を示せばよいとされています。
ただし、法人の役員や個人事業主本人がこの要件を満たしている必要があり、具体的には次のような実務経験が求められます。
建設業に関し5年以上役員等としての経験、または建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として5年以上経営業務を補佐した経験などが求められます。
営業所技術者(旧・専任技術者)とは
営業所技術者(旧・専任技術者)は、建設業の営業所ごとに配置しなければならない技術者のことです。営業所技術者は、申請する建設業の業種に応じた技術的資格や実務経験を有している必要があります。
専任技術者は2024年12月に名称が営業所技術者になりました。主要な要件は変わっておりません。
営業所技術者の主な役割は、建設業の営業所において技術的事項について管理・判断を行うことにあります。
- 営業所技術者の必要な要件は次のいずれかに該当することです。
- 1級・2級の国家資格(施工管理技士など)
- 大学・高校で該当する学科を修了し、一定年数の実務経験を有する者
- 10年以上の実務経験を有する者
また、営業所に常勤していなければならず、他の営業所や現場への常時兼任は原則としてできません。2箇所以上の営業所がある場合は、それぞれの営業所に営業所技術者を配置する必要があります。

経営業務の管理責任者と営業所技術者の兼任
原則として、経営業務の管理責任者と営業所技術者との兼任できます。
- ただし、次のような条件があります。
- 両方の職務を常勤でできる体制であること
- 営業所が1つであり、地理的・物理的に1か所で業務が完結すること
- 技術者としての資格・経験要件を満たしていること
中小規模の事業者や一人親方で、役員が資格を持っていて本店に常勤している場合などでは、兼任が認められやすくなっていますが、現場に出ることが多いような場合には、営業所技術者としての「常勤性」が認められないこともありますので注意が必要です。
また、兼任が認められるためには、その者がそれぞれの要件(経営経験と技術資格・経験)を両方満たしている必要がありますし、常勤性も求められるため、それぞれの職務を支障なく遂行できることが前提となります。
主任技術者とは
主任技術者とは、元請けとして請け負った工事(一般建設業)において、工事現場を技術的に管理する技術者のことです。発注者との技術的な窓口となり、施工計画の作成、工程・品質・安全の管理などを行います。
- 主任技術者の配置が必要な工事は次のとおりです。
- 一般建設業許可で受注したすべての工事(特定建設業でない工事)
- 下請契約金額が4000万円未満(建築一式工事は6000万円未満)の場合
配置できる要件は、営業所技術者と同じく資格、または実務経験などの要件があります。主任技術者になるためには、一定の資格や実務経験が必要です。主任技術者は、工事の規模や種類に応じて、必要な資格が異なります。
監理技術者とは
監理技術者は、特定建設業者が元請として請け負う大規模な工事(下請契約金額が4000万円以上、建築一式工事は6000万円以上)に配置が義務付けられている技術者のことです。
主任技術者の上位で同じような役割・立場となっていますが、さらに高度な管理能力と資格が求められます。
- 監理技術者になるには、次のような条件を満たす必要があります。
- 1級施工管理技士等の国家資格を有していること
- 一定年数の実務経験(管理技術者補佐など)を有していること
- 監理技術者講習の修了をしていること
また、監理技術者は、現場専任で配置される必要があります。
主任技術者と監理技術者の兼任
主任技術者と監理技術者は、制度上は兼任できません。どちらも「現場に専任で配置」される必要がある技術者ですが、同じ現場において、両方を兼ねることはむずかしいとされています。主任技術者は個々の工事の施工管理を、監理技術者は下請契約の適正な履行の確保を主な役割としており、その目的が異なるためです。
ただし、特定建設業の技術者が「監理技術者」として配置される場合でも、下請契約が4000万円未満であれば、主任技術者の要件で問題のない場合もあります。監理技術者の資格を持つ者が主任技術者の役割も担うようにする。