商社で接待する頻度も金額も多く、もし税務調査が入ったら反面調査で得意先に迷惑がかからないか心配だという相談がありました。
基本的な対策としては、日常的に領収書と記録(出席者名・目的・成果など)を必ず残すようにしたり、得意先と会計窓口を確認しておいて、反面調査が来たときに備えたり、税理士に連絡して税理士を介して税務署とやり取りするようにします。また、誤りを見つけたら、自主的修正でペナルティ回避や軽減を図れる場合があるので税理士と相談しながら対応します。
それでは、さらに詳しく税務調査での交際費の調査について、いくらくらい交際費をつかっていると入りやすいか?、反面調査の可能性、日ごろからの対策、もし税務調査が入った場合の注意点などを詳しく解説します。
交際費とは何か?税務上の扱いについて
税務調査では、交際費は重点的にチェックされる項目のひとつです。交際費は、私的な支出と仕事上の支出の境界線が曖昧になりがちであり、税務署は経費として認められるかどうかを確認します。売り上げ等に比べて多額の交際費を計上している企業は、税務調査の対象となりやすい傾向があります。
交際費等の定義
交際費とは「得意先・仕入先その他事業に関係のある者」に対する接待、供応、慰安、贈答などに支出する費用のことであり、その範囲や損金算入の計算については下記のURLの国税庁のタックスアンサーで詳しく説明されています。何が交際費に該当するか、領収書・出席者の記録などの立証が重要です。
中小法人向けの特例
資本金などの要件を満たす中小法人には交際費の損金算入の特例、たとえば、一定額まで全額損金算入、接待飲食費の50%損金算入などが適用されています。
法人が支出した交際費等は、原則として、損金の額に算入しないこととされています
が、中小法人は、① 800万円までの交際費等の全額損金算入②接待飲食費の
50%の損金算入(注1)の選択適用が認められています(注2)

税務調査(交際費)で税務署は何を調べる?
主として、本当に接待が行われたかどうかの「支出の実態」「相手が仕事に関係あるのか?」、業務上の必要性などの「支出の目的」、領収書、出席者名簿や議事録などの「証憑の整合性」がチェックされます。
これらの立証が不十分だと否認され、損金不算入や加算税の対象になります。
いくらくらい使うと入りやすいのか?調査対象になりやすい傾向
「交際費がいくらだと税務調査に入りやすいか」という明確な基準はありませんが、一般的には、売上高や事業規模に比べて交際費の割合が異常に高い場合は、税務署の注意を引く可能性が高まります。
例えば、同業他社と比較して交際費が突出している場合や、前期に比べて交際費が急増している場合などが該当します。金額そのものよりも、他の指標とのバランスが重要です。
金額の「明確な一律なライン」はありませんが、 調査対象の選定は税務署の内部データや申告内容の不整合、業種別平均との乖離、同一先への頻繁・高額支出のパターンなどを総合して判断されます。「○○万円以上で必ず調査」といえる基準はありません。
実務的な目安(税務署が注目しやすいポイントとは?)
売上規模や業種に比較して、過度に高額の場合、頻度が高い支出が続く場合や同一の取引先に対する継続的な高額接待(取引実態が薄いのに接待だけ大きいなど)、領収書が曖昧だとか、出席者名がない、内容が記載されていない領収書が多い。現金払いが多い、丸めた金額(端数がない)など不自然な支払いパターンが多いと「不自然なパターン」として調査官の目に留まりやすくなります。

「反面調査(取引先への照会)」は来るのか?・来たらどうなるのか?
反面調査とは
税務署が調査対象企業の本人だけで十分な情報が取れないと判断した場合、取引先などの第三者に対して実地確認やヒアリングや帳簿照会を行う調査手法のことです。
当事者である会社(自社)の帳簿や書類だけでは確認が難しい事実関係(例えば、交際費が本当に事業に関連するものだったか、取引先との間で架空取引がないかなど)を確認するために実施されます。
法的根拠
調査官には質問検査権があり、必要があれば関係者(代理人・従業員等)にも及びます。つまり税務署が必要と認めれば第三者調査を行うことができる制度的根拠があります。
事前連絡や配慮
国税庁の内部手引きでは、反面調査の実施に当たっては「必要性」と「反面調査先への事前連絡の適否」を十分検討するよう定められてあり、担当署は事前告知の可否や配慮を判断します。とはいえ実務上は抜き打ちで来ることもありますので注意が必要です。
取引先に与える影響(実務面)
取引先に突然、税務署から確認が行くと当然、とまどいや業務の支障が発生します。電話対応や帳簿確認の負担も増える場合もありますので、事前に主要得意先へ「税務署から照会が入る可能性がある」旨だけでも伝えておくと取引先の負担は軽くなります。税務署側も事前連絡の是非を考慮します。
日ごろからの具体的な対策(実務チェックリスト)
経費の「立証」体制を整える
必須で残すもの
領収書(原本)、出席者名(会社名・役職・氏名)、訪問先(店舗名)、支出目的(商談の要点)、議事メモ/成果(例:見積依頼、見込み受注)
領収書の管理
誰と、いつ、どこで、何のために、いくら使ったのかを領収書の裏面などにメモしておきましょう。これにより、支出の事業関連性を明確に証明できます。
金額の妥当性
支出額が常識的な範囲内であるかを確認します。あまりに高額な飲食費などは、私的な支出と疑われる可能性があります。
会計伝票に記載
上記を電子伝票やエクセルなどの補助帳に必ず連結して保存。会食ごとにメモ風の1行で済ませないようにします。
交際費を使った目的(例:〇〇社の部長との新事業に関する打ち合わせ)を詳細に記録します。これは、調査官に支出の正当性を説明する際の強力な証拠となります。
支払のトレーサビリティ
会社カード・銀行振込を基本にして、個人立替は原則避ける(どうしても立替がある場合は立替精算書、領収書、事前承認が必要)。
内部ルール
接待費の事前承認フロー(上限金額・承認者)、業務目的のテンプレ(必須項目)を定めておく。
保存期間
税務調査で過去数年分の確認が入る可能性があるため、原則7年程度はすぐ取り出せる形で保管します。
客先への配慮(反面調査対策)
重要な得意先とは日頃からの関係構築(連絡窓口の確認、経理担当の名刺交換など)をしておきます。
反面調査が来たときも「どの窓口で誰が対応するか」を社内で決めておけば先方への負担は減ります。
社内教育
経理・営業に対し「交際費の証憑要件」「安易な個人立替の禁止」「立替の際の精算書の書き方」を周知します。現場の認識ズレが指摘の原因になります。
事前チェック(税理士に頼む)
年度途中で交際費の使途チェック(税理士によるレビュー)を入れ、問題箇所は修正・補強しておくと、税務調査のリスクを下げられます。
税務調査が入ったら(初動でやること・注意点)
初動の対応が結果に大きく影響しますので慌てずに税理士へ連絡します。
隠蔽は重いペナルティにつながるリスクがあります。書類は絶対に隠さない・廃棄しない(法的には帳簿書類の提示・提出義務があります。
あいまいな発言は避け、税理士を通じた確認する。調査官への説明は事実に基づく。
第三者照会(反面調査)がある場合、税務署は「事前連絡の可否を検討」しますが、実務上は突然通知が行くこともあります。重要得意先へは速やかに事情を説明し、税理士が窓口になるなど先方の負担を減らす配慮を行います。
税務署の事前通知を受ける前に誤りに気づき自主的に修正申告すれば、過少申告加算税が課されない等の救済がある場合があります(ただしケースにより要件あり)。自主的修正(調査前の申告修正)も検討する。税理士と相談のうえ速やかに対応する。
具体的な対応では、事実のみを話すようにします。知らないことや不確かなことは、「分かりません」と正直に答えます。推測で話すと、後で矛盾点が出てくる可能性があります。
いらない無駄な話はしないようにします。調査官の質問にだけ簡潔に答えます。余計な話をすると、新たな論点を提供してしまう可能性があります。
すべての質問に即答しないようにします。質問内容を十分に理解してから答えましょう。重要な質問には、顧問税理士と相談してから回答するほうがよいでしょう。
ともかく、税理士に立ち会ってもらったほうがよいでしょう。税理士は税法の専門家であり、調査官とのやり取りをスムーズに行い、不当な指摘から会社を守る役割をしてくれます。
罰則・追徴のリスク
過少申告加算税・無申告加算税・重加算税などの加算税が課される可能性があります。特に「故意の隠蔽・仮装」が認められると重加算税の対象になり得ます(税率や適用基準は状況により異なるため要注意)。
また、悪質な場合は刑事罰(脱税事件)に発展するリスクもあり得ます。したがって誤りを発見した場合は速やかに税理士と相談して対応することが重要です。
参考(主要な出典先)
国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営)」反面調査の取扱い等。
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/120912/index.htm
国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
中小企業庁「交際費課税の特例(中小法人向けの交際費制度)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/kousai.html
第1章 法第74条の2~法第74条の6関係(質問検査権) – 国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/01.htm?utm_source=chatgpt.com
税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け) – 国税庁
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm?utm_source=chatgpt.com
法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm?utm_source=chatgpt.com



